ケガで済んでるのかな(コウ)
「いた……。」
「大丈夫っすか!?もっくんもじんじんもボロボロ……って、やっこですらケガしてるじゃないっすか!」
私達が物置として使っている部屋。その入り口にチェーンがぐるぐる巻きになっていたので、浮幸と私で急いでほどいて中に入り部屋を見回すと、奥の方で幻と仁、夜紅の3人が乱雑に寝かされているのが目に入った。
3人の状態を確認するため、すぐさま浮幸が駆け寄る。
ただ、大怪我はしているが3人とも命に別状はなさそうだ。……そもそも、市長は殺すつもりなどなかったみたいだけれど。
しかし、少量とはいえ、目の前の仲間が血を流しているのを見ると焦るもので、
「えと、えと、とりあえず救急車を呼ぶっす。」
そう言うと浮幸もスマホを取り出して電話をしようとした。
でも、それは下から伸びてきた手に止められる。
「待て……ダメだ。」
「何で……放置したら死んじゃうかもしれないんすよ!?」
「落ち着け……。」
絞り出すような声で幻が言ったものだから、さすがに浮幸も静かになる。とはいえ、内心は焦っているのだろう。挙動が落ち着かない。
「奴は……市長は、精霊界に行く手段を探しているみたいだった。なんの手がかりも得られていないままに、現状で唯一可能性のある俺達を殺すとは思えない。」
「そうね……確かに3人とも急所は外されているわ。確実に殺れるチャンスはあったはずなのに。」
「まぁ、痛かったけどね……。」
そう言いながら3人がゆっくりと起き上がる。見ているだけで痛々しいけれど、とりあえず良かった……。
「でも、とりあえず救急箱持ってくるっすから。」
その声が最後まで聞こえる頃には、この部屋に浮幸の姿は無くなっていた。
「そんなに急がなくても大丈夫なんだけどな……。」
「そう言われても、うさぎも私も心配してたんだよ。」
「……悪かったな。」
「それ、うさぎにも言ってあげてね。」
私が幻を指差すと、彼はやれやれと言う代わりに鼻を鳴らした。
「でも、加護がある夜紅までケガするとはね……。」
「ま、能力とか闇でなら普通に加護を無視して殺せるからな。」
「……え?そうなの?」
私が聞き返すと、幻は呆れるようにまた鼻を鳴らした。
「『精霊の加護』はあくまで自分の能力に耐えられるような強化で、確かに打撃面には強くなれる……でも、刃物やトゲに対してはそこまでの耐性はつかないし、能力や闇を使えばそもそも加護を無視して攻撃できるし……別に絶対防御ってわけじゃないんだよ。」
「はぁ……。」
そうだったんだ……ユウにも教えておこう。
「まーまー。僕も最近まで鉄壁の防御だと思ってたし。夜紅ちゃんだって試したことはないもんね?」
「……え?ごめんなさい、ぼーっとしてて聞いてなかったわ。」
「珍しいね、考え事?」
「えぇ、まあ。」
夜紅は短く答えてから、小さく続ける。
「邪魔になってないといいんだけど。」
「邪魔?なんのこと?」
「大変っす!」
私が夜紅を追及しようとしたら、浮幸が救急箱を持って戻って来た。……目をまんまるくして。
「外……やっこの霧が……凍ってるんっす!」
「……!それ本当?」
浮幸の言葉に、誰よりも速く反応したのは当然、夜紅。
でも、彼女の能力でそんなことをやっているのは見たことないけど……。
「……要だな。」
幻が呟くように放った。
それでも、よく分からない。なんで霧を凍らせる必要が……。
「やりあってるんだろ、市長と。」
「ええ、恐らくは。」
「……一旦避難だ。裏から出るぞ。」
「そうね……あ、待って。」
スマホを見ていた夜紅が、部屋を出ようとするみんなを制止するように手をつきだす。
「要からメールが入ってるわ。『OK出すまで出ないでね。』だって。」
「……俺達がこの中にいた方が本気を出せるってことか。」
幻はそう言って大きなため息をついた。
それを静かに見ていた4人だったが、なんとも言えない空気を断ち切るように、夜紅が切り出した。
「まあ、任せたのは私達なんだし。」
「別に何も言わねーよ。俺達も一応動けるし……ま、いつでも逃げられるように準備はしておくか。」
「でも、無理はダメっすからね。」
そんな浮幸の忠告を合図に私達は部屋から出た。
とはいえ、私は特に準備するものはないし……誰かのを手伝おうかな。




