四人の高校生の場合 5.
そして今に至るわけだが、四人は打ち合わせをして同じ日にここに来たのではなかった。てつやとしげおはともかく、女子二人は偶然にも他の三人と鉢合わせしていた。まちことさすがはすでに知り合いだったが、一緒に遠出しようとまでは誘い合っていなかった。それに、二人は具体的な終点を決めていなかった。男子二人は目的地を決めていた。結構な距離を走る、なかなか厳しい計画だったが、中継地はちゃんと計算し、とにかく線路沿いを走る、道中の自転車屋も調べ上げた、万が一には備えたプログラムを組んでいた。女子生徒たちも長い距離を走るつもりだったから、それなりの装備をしていた。
しかし四人ともサイクリングは完全に初心者だった。乗るものもそれ専用の立派なのを用意したのではない。学校に申請すればちゃんとしたロードバイクを貸し出してもらうこともできたが、それならそれで漕ぐのに慣れる必要があった。しげおとてつやは、相談して自分たちの自転車で遠出をしてみようと決めた。彼らはそれでなくてもその自転車で幾本ものトンネルを抜けて、何度も大きな街まで繰り出していた。休日ではない放課後の帰りでも強行して行くことがあった。体力のある田舎者の彼らは自分たちと自分たちの用具の限界をそれとなく知っていた。二人の女子もそれは同じで、男子たちの計画を聞いて、自分たちもそれに乗ることはできると思った。
こうして男女合わせて四人の高校生たちの遠征が始まった。彼らは長いトンネルを幾度も通って一路東を目指した。彼らの行程はほぼ線路沿いだが、それは海沿いの国道であり、トンネルの外は海風が心地よかった。風もそうだが彼らにとって初めて訪れる道も、緩やかなカーブが連なり、勝手な感想だが至極走り易くて行く道行く道に歓迎されている気がした。傍を通る車も、こちらを向いているもの、行き過ぎて振り返っているように見えるものが、頑張れよ、と言っているようだった。それは青春の勘違いかもしれない。やがて七本目のトンネルを視界に収め、彼らは小休止した。車が幾台か停められるスペースが海に向かってぽっこりと伸びていて、そこで四人は停車した。おにぎりを持ってきた者が立ったままそれをぱくついた。まだ昼ごはんの手前だが、はやくも空腹を感じたのだった。それを見てたまらず他の者も包装されたサンドイッチなどを取り出した。会話は特段なかったが、何時間か一緒にいてすでに仲間意識はあっただろう。共に汗をかいているのだ。だから空腹も連鎖していた。彼らは、お互いにこのサイクリングに臨む理由をそれほど深く知り合っていなかった。だが、タオルを巻いたり拭ったりしているのを見て、同じ運動部でもないのにきらきらしているように見合っていた。かいた汗や、太陽の角度がそう見せていたにすぎなかったが、四人とも精力に溢れた表情をしていた。充実した気力を誰もが持っていた。
小休止を終えて、再び自転車にまたがった彼らは、七本目の暗いアーチを抜けるために短い直線を走った。そのトンネルも短かった。短いはずだった。だが、四人がそこに入り込んだと同時に、その出口はどんどん遠ざかっていった。行けども行けども明るい出口は彼方へ去り、漕げども漕げども、道はずっと伸びた。四人はやがて、顔を見合わせ、おかしなことが起きているのではないかと思いだした。そして、自転車を降りた。その時だった。
世界がまるで違って見えた。




