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四人の高校生の場合 4.遠間しげおと、野球

 このサイクリングに同行したもう一人の生徒は、名を遠間(とおま)しげおといった。彼は野球のエリートだった。しかし片目を潰して、後遺症も残ってしまった。彼は打球を顔面に当てたのだ。その眼を失明し、眼窩の奥の大脳まで衝撃が届き、ものの記憶力が低下してしまった。怒りっぽくなり、気持ちのコントロールが難しくなった。そして、付き合っていた恋人にも別れを告げられた。事故後の彼の豹変振りに、ついていけなくなったのだ。彼は落ち着きがなくなり、地元にある障碍者クラスに転入させられた。しかし元々、多動性のある高機能自閉症だった彼は、小学生の頃そちらの授業を受けていた。障碍の難は成長と共にあまり目立たなくなっていた。というのも彼は社交的で、明るく、誰とでも分け隔てなく話せる人気者になる資質の持ち主で、何かとんちんかんなことを言ってもフォローがうまくいくようになったからだった。彼は運動も好きだった。高校に上がる時には特待生の免除も受けられるほどに、中学では野球に打ち込んでいた。いかにもスポーツエリートの階段を昇っていた彼だったが大怪我によってその道が絶たれてしまった。

 彼は容姿も悪くなかった。ひどく挫折したが、元のチームメイトを含め、たくさんの援助者がいた。その中に最初の恋人は入らなかったのだが、他の者たちは、皆スポーツの激しさの代償をよく知っていたから、従来の彼の障碍が多少ひどくなったからといってそれでやっかむことはなかった。中学の頃から付き合い始めた彼女は、そうしたことはよく分からなかった。

 彼は野球ができなくなり、退屈した。片目ではできるスポーツは限られてしまう。ものの距離感が測れないから、大抵、新しく始めた競技は思うようにいかない。彼は深呼吸するように別の道を探した。学校の部活ではない、外側に、何か求めた。彼は町のプールに通うようになった。そこは学校でも利用する場所だったが、部活動を通してではなく一般の来場者としてチケットを買って入水した。水の中で、彼は体を様々に伸ばしてひたすらに泳いだ。そこにいると興奮が冷めて、落ち着いて両手両足を動かせた。いかにも自分の夢が絶たれてしまった彼だったが、持ち前の明るさを取り戻すのにそんなに時間はかからなかった。まもなく新しい彼女もできて、新しい友人も数多く手に入れた。眼鏡をかけた、果樹園の息子である町田てつやと知り合ったのも、この折だった。

 しげおは唐突にてつやに、一緒にサイクリングに行かないか、と誘った。てつやの中にしげおはくすぶる何かを見つけていた。自分のように、決めかねる未来を感じ取っていたのかもしれない。てつやははっきりと返事した。心を込めて、「行こう」と諾した。

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