四人の高校生の場合 2.水野まちこと、弓
彼のように覚悟を決めてこのロードに望んでいたのは、他の三人も一緒だった。そのうちの一人ははや弓道の有段者で、水野まちこといった。まちこは練習のし過ぎで手を怪我していた。彼女はお世辞にも顔がいいと言えなかった。むしろあばただらけで、彼女は容姿に強烈なコンプレックスを抱えていた。しかし主にその顔の右側に集中した凸凹は、華麗に彩る仮面にも見えた。前髪に遮られると、不思議な艶やかさを見せて、誰もその驚きを口にはしないがその眼差しが強く輝いて見えるのだった。確かに彼女ははやくも段位を得られたほど、類い稀な集中力を持っていた。凜として弓を引くその姿は、弓術というものが持っている武道の美しさを質素に際立たせていた。だがどんな達人も失敗することがあるように、いつものように動かした手先が普段とは違った軌道を描いた。それは跳ね返る弓の弦の最も反復が大きいところに当たり、したたかに甲と指が打たれた。その反対の彼女の持ち手も、弦が引き離された振動で自然と弓が返るのを、なぜか強く握り締めたまま、動かなかった。弓は、放つときに持ち手を幾分体から遠ざけながら打つのに、それをしなかった。非常に危ない打ち方をしてしまったのだ。彼女の利き手にはあざがはっきりと残った。そしてその傷跡以上に、強い動揺を心に広げた。
傷は大したものではなかった。すぐに治ったが、まちこはしばらく道場に行くのを渋った。前ほどまた集中をして矢を放てるかどうか自信がなかった。そうしているうちに、今度はまた別の怪我を負ってしまった。道路へ飛び出していく小さな子供を、慌ててランドセルをつかみ引っ張った時だった。下校中に道を一緒にしたその子は向こう側の歩道に友達を見つけ、駆け寄ろうとしたのだった。ずきっと痛みが走り、彼女の指は違う方向を向いていた。二人の傍を下校中の自転車がスピードを出して通り過ぎていった。彼女はそんなに強くつかんだつもりはなかったが、親指とその他の指が衝突し、脱臼してしまった。元から握力は強かったのだが、力の加減を間違えたのだろう、いよいよ元の通りに矢羽をつがえられるかその手は分からなくなってしまった。
まちこは憔悴してしまった。しかし様々な大型の施設が並ぶほど、スポーツの盛んなその町には、メンタルヘルスの専門化も在住していた。彼女は医師に診察を受けた。ドクターから提案されたのは、手をあまり使わない全く異分野の運動、長距離のサイクリングだった。




