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四人の高校生の場合 1.町田てつや

 僕たちは何も失敗したというわけではない。ただ戻り方を間違えてしまった。ある世界に飛ばされた僕たちははじめ何をすればいいのか分からなかったんだ。だけど、目の前にある武器を取ったら、もしくは目の前の病人を看護したら、その時から新しい人生が始まったから、引き戻るに戻れなくなった。

 僕たちは犠牲者だ。ここに訴える。僕たちは、犠牲者だ。


 それは今からおよそ二十年後の未来だった。四人の高校生たちが揃って自転車に乗っていた。四人は同じ学校の生徒だった。めいめいが動きやすい服装をしていた。遠出をするから、Tシャツにジーパンか、あるいはジャージを履いて、スニーカーを用意し、帽子を被る者は被った。一人だけ眼鏡の子は、コンタクトで来るかどうか迷ったが、結局眼鏡で来た。

 四人は一斉に漕ぎ出した。駅前のタクシー乗り場から一斉にだ。地方の駅の狭いうなぎの寝床のような駅前道路は、そんなに賑やかではなかった。繁華街はちょっと角を曲がって、小山のふもとに軒を連ねる飲み屋街から始まるのだ。その向こうにようやくデパートがあり、衣料品店やスマートフォンショップがせせこましく肩を並べる。山がちなこの辺りは町が発展したのも奇跡のように、狭い平地を奪い合うようにして民家が立ち並んでいた。ただ、海も近いために、夏でも空気が籠もることはなく、風が澱もうとする熱気をかき混ぜてくれていた。

 学校は小高い山の中にある。小、中、高と、ほぼ同じ場所にあった。小学校と中学校は、この地域にもう一つずつあるが、高校は一校だけだった。子供たちは域外の高校をメインに選んだ。というのも、ここにある高校はスポーツ育成を重んじる体育系の学校だったからだ。特待生を募集していて、こんな田舎くんだりにある学校にわざわざ都会から入学を希望する学生もいるほどだったが、地元民はやはりこんな山あいの町から出て、都会に行きたがった。しかし町は、こぞってスポーツ施設を誘致していて、切り拓かれた山には競技場、野球場、ゴルフ場が並び立ち、盛んな産業といえば果樹や林業しかなかったところに新しい息吹を求めて、成功していた。町全体がスポーツを機軸とした総合アミューズメントパークと化して、今日にいたってさらに緩やかに発展していた。駅前だけはかつての趣のままだったが、山の奥に行けば行くほど、町は広がりを見せていた。プロスポーツがこの町の施設を利用することもあり、その際は大変な騒ぎになるほど町の外からもやって来た人々がごった返し、お祭りのように的屋の屋台が並ぶことも稀ではなかった。

 町田てつやは、この町出身の高校生だった。彼は特待生ではなかったが、この町の高校に通っていた。別に運動をやっていなくてもこの辺りの子供たちは皆有名選手たちを目の当たりにし、彼らに憧れを持つのは珍しくなかった。てつやもその一人だった。彼は眼鏡をかけていて、お世辞にも運動神経はよくなかった。それでも体を目いっぱい動かすことは大好きな少年で、両親の果樹栽培の手伝いをしながら、スイミングスクールに通っていた。水の中で、手を伸ばし、足を伸ばし、思い切り掻く。その動作でいかに効率よく速く泳げるかが部活動なら指導されるべきところだが、彼は部活には入っていなかった。自由に、手足を広げて、水の中で動いているだけで彼は満足し、タイムを更新することなどは全然意識しなかった。それでも、時折訪れるプロスイマーたちの練習を見ると刺激を受けたり感銘を覚えたりした。過去にメダリストを輩出したこともある、彼の所属するスイミングスクールは、その整った施設を存分に利用して最新のトレーニング法を導入していた。彼の通うプールとプロがトレーニングするプールは隣り合っていた。てつやは、自分の泳ぎを改善したり、選手たちの真似をしたりするつもりはないものの、プロの泳ぎ方にはいつも魅入られた。あれだけ少ないストロークで、よくあんなに速く、水の中を進めるものだと見るたびに感嘆した。今や彼はプロたちの真似をする気はないが、それまでその泳ぎをコピーしたことはあった。しかしどうしてもうまく真似れなかった。従来の自分の運動能力の低さを思い知らされるばかりになって、やめてしまったのだった。

 彼は今日、なかなか長い道のりのサイクリングをしようと思って、自転車にまたがっていた。受験がそろそろ控えていた。彼は少しでも自分の将来の意志をはっきり決めたく思っていた。水泳はあくまで趣味だ。その道に進む気などさらさらない。でも、このまま両親の仕事を継いで、オレンジの栽培に身を投じる覚悟があるかというと、そこまででもない。大学も、自分の学力に丁度いいところが、はたして自分の行きたい学校なのかというと、よく分からない。とにかく夢中で、完走できるかできないか分からない微妙な長距離を、走ってみたく思っていた。

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