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続・代役を立てよう

レレト視点。

「おーい、血ぃくれ……あ?」


いつも通り吸血しに女の部屋に行くと、ベッドに知らない女が座っていた。

全身黒色の、肌がやたら白くて髪の長い女。

家間違えてない…な。ん?


「…っほんとに、いるんだあ」


知らない女は感動したように口元を押さえて、キラキラした目でこっちを見てくる。

どうしたものかと思っていると、ドアが開いていつもの女が入ってきた。


「あ、よっす」

「うす…」


なんか友達みたいなテンションで片手をあげられて思わずあげ返した。

こいつはいつものスウェット姿に戻っている。


「んで、誰こいつ?」

「木本カナちゃん…通称きっちゃんです」

「名前言われてもなあ」

「理智ちゃん!すごい、ほんとにイケメン…かっこいい!」


きゃいきゃい騒ぐ…えーと、「きっちゃん」?に悪い気はしないもののなんだこいつ、と変なものを見るような視線を送る。

なぜか対面の女も同じ視線を送っていた。友達じゃないのかお前は。


「えーっと、きっちゃんはなんと、DV嘘つき吸血鬼であるアンタに血を快くくれるそうです!」

「肩書が失礼極まりない…暴力したことないし家庭内でもねえわ」

「正論のツッコミなんて求めてないんですあと噛みつくのは立派な暴力です!」


まあそんなことはいいとして、快く血をくれる?

理解が追い付かない俺に女は詳細の説明を始めた。


「まず第一に。私は血を吸われたくない。痛すぎてストレス。噛み跡がなんか治り悪いしストレス。見返りがないのに痛くて血を取られるストレス。これを解決すべく生贄…じゃない、代役を立てることを思いつきました」

「生贄って言ったな」

「言ってません。きっちゃんは生来の吸血鬼好き、なおかつピアス開けまくるぐらいに痛みに強い!まさに適材適所、最適の人材なわけよ。しかも可愛いでしょう?」


「きっちゃん」の肩に手を乗せ、どうだ見てみろと促される。

確かに、この変な女より美人だと思う。


「あの、吸血鬼さん…お名前は?」

「…レレト」


控えめに、でも期待に満ちた目でこちらを見る「きっちゃん」に名前を聞かれた。

そういえばあの女は名前とか一切聞いてこなかったな。

現にあの女は、へえ名前カタカナなんだあと他人事のように眺めている。


「レレトさん、私でよければ…ぜひ吸血してください。私は痛みに強いし、きっと耐えられると思います」


長い髪を片側に流して、片方の首筋を晒して微笑んでくる。

確かに快く血をくれそうだし、従順で文句も言わなそうだ。

そっと「きっちゃん」の肩を掴んで、首筋に顔を寄せる。



『忘れろ、眠れ』



耳元で囁くと、「きっちゃん」はばったりと後ろのベッドへ倒れこんだ。



「きっちゃん?!」

「催眠術で眠らせただけだって」


慌てて駆け寄る女にそう告げて、ローテーブルに腰掛けて足を組む。

寝ていることを確認するとほっとしつつ、文句を言いたげに俺を見た。


「何なのよアンタ、きっちゃんが折角快く受けてくれるのに」

「お前さあ、友達生贄にして心痛まないのー?ひどくない?」

「う、そら悪いとは思ったけど…きっちゃんが引くほど乗り気だったから…まあいいかなって…」


もごもごと言いにくそうに言い訳をする。まあ確かにあの感じで乗り気ではあったんだろう。


「嫌がったならやめるし、今日もお試しで、大丈夫ならお願いしようかと…」

「なんか勘違いしてないお前」

「あ…?」


俺の言葉に意味が分からなそうに眉を寄せる。

渋々立ち上がって、ベッドに座る女の頬を掴んで引き寄せる。


「選択権も決定権も俺にあるの。お前が代役立てたところでなーんの意味もないって」

「……」

「俺はお前の血が欲しいの。快くくれる可愛い女よりごねてごねて可愛くないお前のね」

「………」


みるみる苛立った表情になる女。おもしろ、と思っていたら


「っい!」


普通に脛を全力で蹴飛ばされた。


「ってぇなバカ!」

「こっちだっていつも痛いっていってんでしょ?!前回私が噛んだ時はM要素出してたんだから喜びなさいよ!」

「脛蹴られて喜ぶやつなんかいねえわ!」

「噛まれて喜ぶやつだって異常だわ!」


そういった後に、はっと気が付いて女が寝ている「きっちゃん」を見やる。


「…きっちゃんすごい噛んでほしそうだったなあ…」

「…異常なんだろうな」


寝る前の異様なキラキラテンションを思い出して、なんとなくあいつも俺も落ち着いてしまった。

変な女の代役作戦は失敗ってことで。



「俺に関する記憶消した、とりあえずここに泊まった経緯だけ適当に嘘ついとけば」

「きっちゃんと共通点ないんだよなあ…まあうん、りょ」

「じゃあ明日出直すわ。明日血ぃよろ」

「嫌です。おとといきやがれ」

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