表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/111

第98話 灯の消える夜

 夜は静かだった。


 丘の観測所には、

 いつものように望遠鏡が並んでいる。


 遠枝の灯は、

 今夜もいくつか揺れていた。


 星とは違う光。


 人の火。


 遠い文明の夜。


 カイルは少し離れた草の上に立つ。


 観測員たちは静かに記録を取っている。


 誰も声を荒げない。


 この丘では、

 夜はいつもそうだった。


 セリーヌが望遠鏡を覗く。


 しばらく動かない。


 そのまま、

 ゆっくり言う。


「……一つ、弱い」


 誰もすぐには分からない。


 だが、

 皆同じ方向を見る。


 遠枝の灯の一つ。


 小さな光。


 ほとんど星と区別がつかないほどの光。


 それが、

 少しだけ暗い。


 揺れている。


 風のように。


 呼吸のように。


 カイルは空を見ている。


 灯はまだある。


 だが、

 弱い。


 丘の草が揺れる。


 遠くで森の葉が擦れる。


 世界は静かだ。


 幹振動が、

 足元から伝わる。


 どくん。


 どくん。


 低く、

 深い鼓動。


 その鼓動の間で、

 小さな光がまた揺れる。


 さらに弱くなる。


 観測員の一人が言う。


「落ちる」


 誰も答えない。


 灯はまだ消えていない。


 まだ揺れている。


 その光の向こうに、

 小さな影がある。


 枝の歪み。


 遠い枝。


 その灯が、

 また一度だけ明るくなる。


 まるで、

 最後の火のように。


 そして。


 消えた。


 音はない。


 爆発もない。


 空も変わらない。


 ただ、

 そこにあった光が消える。


 遠枝の影だけが残る。


 星は同じように輝いている。


 夜も同じだ。


 だが、

 一つだけ違う。


 灯がない。


 丘の上は静まり返っている。


 セリーヌが望遠鏡から目を離す。


「記録」


 それだけ言う。


 誰かが紙に書く。


 時間。


 位置。


 光度。


 剪定。


 誰もその言葉を口には出さない。


 だが、

 皆同じことを理解していた。


 世界樹は伸びる。


 枝は増える。


 だが、

 すべてが残るわけではない。


 遠枝の影は、

 夜の奥に浮かんでいる。


 カイルは空を見ている。


 消えた場所。


 何もない場所。


 そこにも、

 かつて夜があった。


 火があった。


 誰かが空を見上げていたかもしれない。


 だが、

 今はない。


 幹振動がまた落ちる。


 どくん。


 どくん。


 鼓動は止まらない。


 世界は伸び続ける。


 灯が一つ消えても。


 それでも。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ