表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/111

第86話 長い影

 黒い太陽が昇る時間は、

 まだ誰も正確には知らない。


 日の出のすぐ後の日もあれば、

 昼近くまで姿を見せない日もある。


 だが、

 一つだけ確かなことがある。


 影が二重になる時間がある。


 朝の市場。


 屋台の布が風に揺れる。


 果物の山が並び、

 魚を並べる桶から水が流れる。


 人は多い。


 だが、

 皆どこか空を気にしている。


 太陽は高くない。


 空の少し上に、

 薄い輪郭が浮かぶ。


 黒い太陽。


 その瞬間。


 影が増える。


 屋台の柱の影が、

 二本になる。


 人の影も二つ。


 少しずれて、

 少し長く。


 子供たちは笑う。


「見ろよ、二人いる!」


 少年が足を動かす。


 影が二つ、跳ねる。


 もう一人の自分のように。


 隣の少女も飛ぶ。


 影が重なり、

 また離れる。


 大人たちは、

 それを止めない。


 ただ、

 少し黙って見ている。


 年配の男が呟く。


「昔は一つだった」


 誰も答えない。


 市場の奥で、

 鐘が鳴る。


 影の時間は、

 長く続かない。


 黒い太陽が少し動くと、

 影は一本に戻る。


 世界はまた、

 いつもの形に見える。


 畑で、

 カイルは鍬を止める。


 影が二本。


 畝の上に、

 長く伸びる。


 片方は太陽。


 もう片方は黒い太陽。


 作物の芽も、

 二つの影を落とす。


 カイルは空を見る。


 黒い太陽は、

 静かに浮かんでいる。


 熱は感じない。


 ただ、

 光だけがある。


 足元の土を踏む。


 幹振動。


 低い。


 ゆっくり。


 だが、

 以前より確かだ。


 世界はまだ、

 伸びているのかもしれない。


 影が一本に戻る。


 カイルは鍬を入れる。


 土は柔らかい。


 芽は昨日より伸びている。


 遠くで子供たちの声が聞こえる。


 二つの影を追いかけている。


 彼らにとっては、

 これが普通になる。


 カイルは土を崩す。


 世界は変わった。


 だが、

 畑は同じだ。


 芽は出て、

 伸びて、

 実をつける。


 それだけだ。


 ただ一つ違うのは、


 空が、

 少し深くなったことだけだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ