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農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


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第82話 合流

 天空の裂光は、消えなかった。


 薄く、空全体に常在する。


 幹振動は、これまでで最も整っている。


 押す波と引く波が、

 完全に釣り合う。


「位相一致、臨界」


 セリーヌの声は震えなかった。


 ただ、記録する。


 空の二層が、

 ゆっくりと重なる。


 黒い太陽と、

 こちらの太陽が、

 同時に昇る。


 影が四重になる。


 だが、

 衝突は起きない。


 光は混ざらない。


 重なるだけ。


 その瞬間。


 地平線の向こう、

 幹の影が明確になる。


 巨大な柱。


 二つの太い枝が、

 並走している。


 接触面が広がる。


 音はない。


 爆発もない。


 だが、

 大地が深く震える。


 崩壊ではない。


 共振。


 畑で、

 カイルは立っている。


 土が透ける。


 深層で、

 二つの枝が触れる。


 絡まず、

 切れず、

 ただ並び、

 接面を増やす。


 その接触線から、

 光が走る。


 荒野の再芽が、

 一気に伸びる。


 向こう側の光柱と、

 一本の線で繋がる。


 天空に、

 白い環が生まれる。


 裂け目ではない。


 **接合環。**


「合流開始」


 リナが息を呑む。


 地形が、

 わずかに揺らぐ。


 山脈が遠ざかる。


 海が深くなる。


 都市の外縁に、

 見慣れない丘陵が現れる。


 破壊ではない。


 再配置でもない。


 追加。


 向こう側の地形が、

 こちらに層として重なる。


 黒い太陽が、

 空の一角に固定される。


 第二光源として、

 常在する。


 重力が、

 ほんのわずかに変わる。


 観測器が悲鳴を上げる。


 だが、

 崩壊値は出ない。


 幹振動が、

 最大に達する。


 一瞬。


 世界が、

 静止する。


 時間が止まったような、

 感覚。


 次の瞬間。


 振動が、

 深く、低く落ちる。


 安定域。


 合流は、

 破断せず完了した。


 空の二層は、

 一つの厚い空になる。


 星が増える。


 奥行きが増す。


 黒い太陽は消えない。


 こちらの空の一部になる。


 荒野の再芽は、

 若い森へ変わる。


 接続線は、

 完全に固定される。


 幹の影が、

 ゆっくりと薄れる。


 だが、

 消えない。


 支え続けている。


 エリオットは空を見上げる。


「……合流完了」


 誰も歓声を上げない。


 誰も膝をつかない。


 世界は、

 壊れなかった。


 救われもしなかった。


 伸びただけだ。


 畑で、

 カイルは土を踏む。


 重さはある。


 だが、

 圧はない。


 侵入不可は存在しない。


 境界は戻らない。


 世界は、

 二本の枝が合流した、

 太い一本の枝になった。


 天空の裂光が、

 ゆっくりと薄まる。


 だが、

 奥行きは残る。


 星座は増えた。


 空は深い。


 世界は、

 孤立していない。


 成長した。


 それだけだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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