第81話 天空の裂光
世界樹構造が暫定確定してから、三日。
幹振動は穏やかだった。
だが、
振幅の底が上がっている。
静かな高まり。
夜。
空が、ゆっくりと白む。
雲ではない。
光だ。
星の奥から、
淡い裂光が滲み出す。
線ではない。
裂け目でもない。
空全体に走る、
細かな光の筋。
「位相重合率、九十超」
リナの声が低い。
黒い太陽が、
いつもより明るい。
こちらの月と重なり、
二重の輪を描く。
昼と夜が曖昧になる。
都市の灯りが、
不要になるほどの淡光。
だが、
まぶしくはない。
優しい。
畑で、
カイルは空を見上げる。
土の奥が、
はっきりと透ける。
幹が見える。
巨大な柱。
その表面を、
光が走る。
枝と枝が接触する地点が、
輝いている。
こちらの枝と、
黒い太陽の枝。
接触面が広がる。
絡み合うのではない。
並走する。
その瞬間。
地平線の向こうに、
巨大な影が立つ。
実体ではない。
位相投影。
幹の全体像。
天を突き、
無数の枝を抱える影。
都市の人々も見る。
説明はない。
だが、
誰も悲鳴を上げない。
畏怖が、先に立つ。
「顕現……」
セリーヌが息を呑む。
幹は押していない。
ただ、
伸びる余地を示している。
天空の裂光が、
強まる。
だが、
破断値には達しない。
枝は裂けない。
地面が、
わずかに隆起する。
海が、
さらに広がる。
山が、
わずかに高くなる。
測量値が狂う。
だが、
崩壊はない。
世界は、
光の中で静かに拡張する。
荒野の再芽が、
一本の細い枝へ変わる。
黒い太陽の枝と、
位相が完全に揃う。
天空の裂光が、
一瞬だけ最大に達する。
白い。
だが、
眩しくない。
空全体が、
呼吸する。
そして、
ゆっくりと光が落ち着く。
裂光は消えない。
薄く、
常在する。
幹振動が、
さらに低下する。
安定域。
世界は壊れていない。
裂けてもいない。
光の中で、
太くなった。
カイルは土を踏む。
重さはある。
だが、
圧迫ではない。
深い安定。
空に、
幹の影が残る。
完全には消えない。
世界は、
その構造を一度、
目にした。
神ではない。
奇跡でもない。
成長の可視化。
天空の裂光は、
終わりではない。
**合流の前兆だった。**
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