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農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


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第76話 幹は押していない

 幹振動は、止まらなかった。


 だが、

 その質が変わっていた。


 セリーヌは波形を何度も重ねる。


 荒野消失前。

 白い裂け目前。

 そして現在。


「圧縮成分が減少しています」


 リナが言う。


 代わりに、

 緩やかな引力成分が増えている。


「幹は押していない」


 セリーヌが低く呟く。


 これまで、

 幹は整理の主体と考えられていた。


 だが、

 波形は違う。


 押して切る力ではない。


 引いて合わせる力。


「接触角を整えている」


 エリオットが言う。


 枝が伸びる方向へ、

 微細に調整している。


 剪定は、

 位相不一致が自然に脱落する現象。


 幹の意志ではない。


 枝が未成熟であれば、

 自重で落ちる。


 成熟すれば、

 接触へ進む。


「幹は整理者ではなく、

 支持構造です」


 セリーヌの声は静かだ。


 支持。


 枝を支え、

 伸びる余地を作る。


 その夜。


 畑の中央で、

 カイルは立っていた。


 土の奥で、

 脈動が変わる。


 押し上げる波ではない。


 下へ引く波。


 深層へ、

 ゆっくりと導くような力。


 空が揺れる。


 星が二重になる。


 白い帯が再び現れる。


 今度は広がらない。


 厚みを増す。


 隣枝の空が、

 重なったまま揺れる。


 黒い太陽が、

 薄くこちらの空に残る。


 消えない。


 拒まれていない。


「融合圧が増しています」


 リナが叫ぶ。


 だが、

 破断値には達していない。


 むしろ、

 安定値が上がっている。


 地平線が、

 わずかに弧を描く。


 海面が、

 静かに膨らむ。


 地形が、

 微細に拡張している。


 崩壊ではない。


 再配置でもない。


 伸張。


 枝が、

 物理的に太くなり始めている。


「質量再分配」


 セリーヌが息を呑む。


 枝が、

 隣枝と位相を共有し始めている。


 それは吸収ではない。


 合流。


 荒野の欠損部で、

 細い光が伸びる。


 再芽が、

 わずかに膨らむ。


 剪定は終わりではなかった。


 未成熟枝の脱落。


 成熟枝は伸びる。


 畑の境界が、

 ほとんど消える。


 侵入不可は、

 意味を失う。


 だが、

 誰も踏み込まない。


 必要がない。


 カイルは土を踏む。


 重い。


 だが、

 優しい。


 幹振動が、

 ゆっくりと整う。


 引く波と、

 押す波が均衡する。


 枝は切られない。


 枝は折れない。


 枝は、

 伸びている。


 エリオットは空を見上げる。


「我々は誤解していた」


 整理ではなく、

 成長の調整。


 幹は押していない。


 支えている。


 そして今、

 この枝は支えられたまま、

 次の段階へ入ろうとしている。


 空の帯が、

 ゆっくりと光を増す。


 破壊の前触れではない。


 **誕生の前触れだった。**

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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