第69話 拒絶の代償
荒野の第二接続点は、
封鎖された。
立入禁止。
監視のみ。
だが、
幹振動は止まらない。
周期が短くなっている。
振幅が増している。
「次の拍動まで、三十六時間」
セリーヌが言う。
予測誤差は大きい。
だが、
近づいているのは確かだ。
問題は、
荒野の接続点が同期していないこと。
「逆位相が強まっています」
リナが報告する。
幹が押す。
荒野が拒む。
圧が逃げない。
跳ね返る。
その先にあるのは――
小さな集落だった。
荒野の外縁にある、
二十戸ほどの村。
住民は避難勧告を受けた。
だが、
全員が出たわけではない。
「何も起きていない」
それが理由だった。
幹振動のピーク。
星が遅れる。
空が薄くなる。
荒野の中心が歪む。
だが、
裂けない。
拒絶が続く。
その瞬間。
村の外れで、
空気が反転する。
爆発はない。
崩壊もない。
ただ、
一軒の家が“ずれる”。
位置が半歩。
だが、
内部構造は一致しない。
壁が重なり、
床が傾く。
住人が一人、
その場に立っていた。
次の瞬間、
いなくなる。
血も痕跡もない。
ただ、
いない。
縫い直し未満。
接続不全の波が、
弱い場所へ逃げた。
拒絶の反動。
「位置誤差、発生」
観測班が震える声で言う。
荒野は裂けなかった。
だが、
村が歪んだ。
「……代償だ」
エリオットが低く言う。
拒絶は安定を生まない。
圧は逃げ場を探す。
弱い場所へ向かう。
その夜。
畑の中央で、
カイルは土を踏む。
幹振動が強い。
だが、
畑は拒まない。
圧が流れ込む。
沈む。
深層で吸収される。
荒野の振動が収まる。
村の歪みは止まる。
だが、
消えた人は戻らない。
「受け止めるか、跳ね返すか」
セリーヌが言う。
数式は冷たい。
だが、
現実は冷酷だ。
枝は均一ではない。
接続点も均一ではない。
成熟していない接続は、
拒絶する。
拒絶は、
歪みを生む。
畑は受け止める。
だが、
無限ではない。
もし限界を超えれば。
受容点が裂ける。
その時は、
跳ね返る場所がなくなる。
荒野は静かだ。
だが、
地面には細かな歪みが残る。
村の一角が、
微妙にずれている。
住民は沈黙している。
事故として処理される。
管理社会は隠さない。
だが、
説明はできない。
世界は整理される。
成長する。
だが、
拒絶には代償がある。
その事実が、
初めて人間の重さを持った。
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