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農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


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第66話 幹の振動

 最初は、誤差だと思われた。


 深層観測器の針が、

 わずかに揺れ続ける。


 地震ではない。


 断層運動でもない。


 周期は不規則。

 だが、

 完全なランダムでもない。


「拍動に近い」


 セリーヌ・ヴァルトが言った。


 例外調査局に新たに加わった、

 深層振動解析の専門家。


 彼女は神話を嫌う。


 数式で説明できないものを、

 概念で補おうとしない。


「見てください」


 波形が並ぶ。


 振幅は小さい。


 だが、

 収縮と拡張が繰り返されている。


 一定ではない。


 揺らぎを含む。


「人工でも自然でもない」


 リナが呟く。


「生体リズムに近い」


 セリーヌは淡々と続ける。


「ただし、心拍ではない。

 もっと遅い」


 振動は、

 地表全域で同時に観測される。


 畑でも。


 山岳例外跡でも。


 都市縫い直し地点でも。


「枝全体で同期している」


 エリオットが言う。


「局所現象ではない」


 振動の周期は、

 枝規模。


 もし枝仮説が正しいなら、

 幹側から伝わっている可能性が高い。


「幹の圧です」


 セリーヌは断定しない。


 だが、

 波形の位相差が、

 深層から表層へと遅れている。


 上からではない。


 下から来ている。


 その夜。


 畑の中央で、

 カイルは土に触れていた。


 土の奥で、

 確かな脈動がある。


 以前よりはっきりしている。


 一定ではない。


 だが、

 繰り返す。


「……生きてるみたいだな」


 独り言。


 竜は現れない。


 空は軽い。


 だが、

 地は重い。


 セリーヌは畑の外で観測器を見つめる。


「ここだけ、位相が遅れていません」


「遅れていない?」


 リナが問う。


「幹振動と同期しています」


 他地点は、

 わずかに遅れる。


 だが畑は、

 深層振動と完全同期。


「最深接続点」


 エリオットが言う。


 畑は枝の末端ではない。


 根元寄り。


「ここが裂ければ」


 副官が低く言う。


「枝ごと揺れる」


 セリーヌは首を振る。


「揺れているのは、枝ではない」


 彼女は数式を描く。


 振動は上位構造から来る。


「枝は応答しているだけ」


 応答。


 その語が静かに落ちる。


 世界は静止構造ではない。


 応答する構造。


 拍動する構造。


 生体ではない。


 だが、

 無機でもない。


 振動が一瞬強まる。


 観測器の針が跳ねる。


 その瞬間、

 空がわずかに歪む。


 星が遅れて瞬く。


 リナが息を呑む。


「枝間干渉……」


 エリオットは空を見上げる。


 夜は普通だ。


 だが、

 わずかな“薄さ”がある。


 まるで、

 向こう側に何かがあるように。


 振動は収まる。


 だが、

 確信だけが残る。


 幹は存在する。


 枝は接がれている。


 そして今、

 幹が強く拍動している。


 竜は現れない。


 役目を終えたのか、

 あるいは幹に吸収されたのか。


 誰も知らない。


 だが、

 枝は揺れ始めている。


 整理の前兆ではない。


 **成長の兆しかもしれない。**


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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