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農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


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第42話 補償の外に置かれたもの

 補償は、平等だった。


 少なくとも、

 書類の上では。


「金額は、

 家族構成と土地面積に応じて算出されています」


 役人は、淡々と説明する。


「職の斡旋も、

 希望があれば対応します」


 誰も、

 露骨に不満を言わなかった。


 条件は悪くない。

 むしろ、

 手厚い部類だ。


 だからこそ、

 声にならない違和感が残る。


「……これで、

 全部か?」


 誰かが、

 小さく尋ねた。


「はい」


 役人は、即答する。


「これが、

 支援の全てです」


 “全て”。


 その言葉が、

 線を引いた。


 畑に残る者たちは、

 書類を見下ろしたまま、

 黙り込む。


「……種は?」


 年配の農夫が、

 ぽつりと聞いた。


「移転先で使う分は、

 支給されるそうです」


「違う」


 農夫は、首を振る。


「俺の話してるのは、

 あの畑の種だ」


 役人は、

 一瞬だけ、言葉に詰まった。


「……それは、

 対象外です」


 誰も驚かなかった。


 分かっていたからだ。


 あの畑から採れたものは、

 “危険区域由来”として

 扱われている。


 売れない。

 配れない。

 持ち出せない。


 法的には、

 何も禁止されていない。


 だが、

 **保証されない**。


「……つまり」


 別の村人が、

 静かに言った。


「畑と一緒に生きてきた分は、

 勘定に入らないってことだな」


 役人は、

 否定しなかった。


「……制度上、

 評価できません」


 それが、

 最大限の誠実さだった。


 畑の手入れ。

 土の癖。

 水の流し方。


 そういうものは、

 数字にならない。


 数字にならないものは、

 補償できない。


 カイルは、

 少し離れた場所で、

 そのやり取りを聞いていた。


 口は出さない。


 これは、

 彼の話ではない。


 制度が、

 何を切り捨てるかの話だ。


「……まぁ、

 そうなるよな」


 誰かが、

 諦めたように笑う。


「金が出るだけ、

 マシか」


 そう言って、

 書類に印を押す者が増えていく。


 残る者は、

 減っていく。


 畑の価値は、

 人の生活から、

 少しずつ切り離されていった。


 その日の夕方。


 カイルは、

 畑の端に立ち、

 土を見下ろす。


「……聞いたか」


 畑は、

 何も応えない。


 だが、

 以前のような

 柔らかな気配はない。


 守る理由が、

 消えつつある。


 夜。


 ドラゴンは、

 まだ、空にいる。


 だが、

 畑の外に向けていた意識は、

 ほとんど感じられなかった。


 守る対象は、

 もう、

 **人ではない**。


 人の世界は、

 正しい手順で、

 静かに、

 畑を孤立させていった。


 それが、

 何を意味するのかを

 知る者は、

 まだ、ほとんどいなかった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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これからもどうぞよろしくお願いします!

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