『届かなくて』
私は高校を卒業して、ある大学に進学した。
20歳を過ぎて、藍谷隼斗という同窓生と交際していた。
21時過ぎ、ハイボールを飲み過ぎて、藍谷とベッドの上で抱き合っていた。
彼は喉が渇いたらしく、リビングに向かって、ベッドの上でため息を吐いた私だった。
架謂条和仁とはもう会っていない。
架謂条に較べて、藍谷は顔立ちが整っている。
髪飾りを付ける程髪を伸ばしていない。髪が短くても髪飾りを付けて、オシャレをする女性もいるだろうが私はしない。
架謂条と交際出来るなら、爪も飾りつけて、ヘアアレンジも変えたりするだろう。
藍谷は身体目当てで、私と交際している。
私がオシャレさんであろうとなかろうと関係ないようだ。
交際する直前に、身体目当てだと断言され、仕方なく交際している。
架謂条ならしないであろう行為を平気でする藍谷だ。
架謂条が私を選んでくれたら、どれだけ幸せだったかは言うまでもない。
架謂条がどんな女性を選んだのか、結末を知らないでいる。
ベッドの上のシーツに目線を向けると藍谷の身体の輪郭と私の身体の輪郭が残っていた。
藍谷が好きかと聞かれたら、好きじゃないと応える。
藍谷は束縛するタイプでは無いが、好かない男性だ。
何故彼を選んでしまったのか、今となってはわからない。
架謂条の隣は相応しく無いと思って諦めたものの、満たされない日々を過ごすのは辛いものだ。
腕を伸ばしていたのは暗闇で間違いなかった。
藍谷が寝室に戻ってきた。
「蜜璃、お待たせ。さぁ、続きをしようか」
「うん……」
好きでもない藍谷の気持ち悪い舌が全身を這っていき、震えを悟られ無いように我慢した。
友人は数人いるが、藍谷との行為は明かしていない。
私はまだ悪夢を見ていて、彷徨っている最中なのかも知れない。
手に入れたい幸福は簡単に手に入らないものだな、と実感した。




