『昔』
私は架謂条和仁くんと同じ保育園に預けられていた。
ある日のこと、私が1人で佇んでいると1人の私を見兼ねて、「いっしょにあそぼ」と彼が誘ってくれた。
同い年の子供とは遊ばなかったように思う。
保育園を卒園して、小学校に通って、卒業して、中学校に通って、彼のことを忘れていた。
中学校を卒業して、高校に入学した。
高校に入学して、とあるある日に架謂条と名乗る女性が現れ、和仁のお姉さんと告げられ、彼と接触しようとした。
架謂条和仁は当時の彼とは違っていて、多少は困惑した。
彼は下ネタに過敏に反応した。世の男性とは違って、下ネタを嫌った。
歳の差があるとはいえ……だ。
彼に接触して、関わっていくうちに、彼になら抱かれても良い処女を捧げても良いと考え出した。
自宅にいると、自慰行為をしだすことが多くなっていった。
彼のお姉さんとは会うことは少ないが……緊張する。
彼にアプローチするも拒まれてしまう。
就寝している間嫌な夢を見ているようで魘されて、起きることが多くなった。
彼と共にいる時間を優先しているのに曖昧な痛みが胸を占めていく。
彼に手を伸ばしてみるが、暗闇に手を伸ばしているような錯覚を抱き、疼く。
私じゃない私以外の女性が、彼には相応しいだろうと考えてしまう。
彼が幾つか許している谷之坂璃奈という女性と私は何が違うんだろうか?
私はまだまだ彼を解ってあげられていないからだろうか。
言葉にして、呑み込んだのは自身が優位に立ちたいから。
彼を解ってあげられていないから、傷付くんだ。
私はどう振る舞えば、谷之坂に勝てるんだろう?
架謂条和仁の隣に相応しいのは谷之坂璃奈なのだろうか?
私が彼の隣で笑っている未来が想像もつかない。
いつになれば、悪夢から解放されるのだろうか。




