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夢を語る桃源郷  作者: 四太郎
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自分の夢

 2人は蝋燭の明かりを目指し、仄暗い階段を降りた。

 そこはいつもと違う風景だ、キルドの中心にセットされたテーブルに、ウルヴァン自慢料理の数々や、蜜蝋パブの酒類やお茶が整えられ、マリアが出迎えてくれた。


「待っていました~! 2人とも、た~んと、お食べ! 今日は特別よ」


「ギュッタ! 泣くな!! 俺たちがきっちり仕事して! お前をヴォレイオスのお山に届けてやるぜ!!」

 ウルヴァンは何時になく大声だ。


 何者かが後ろからギュッタを強く抱きしめた。


 暖かく柔らかい、ファイアだ。

「ギュッタ、ありがとうよ。お前のお陰で俺さ〜何だか生きていける気がするぜ~。この仕事が済んだら、きっと自分の夢を見つけるよ」


「何故俺に感謝するの? ファイアさんが居なかったら、今の俺なかったよ。感謝するのは俺だよ、幾らお礼言っても足りないよ!」


 ファイアはギュッタの肩を抱いたまま話し出した。

「あの冬の日、お前を見かけるまで自分の死に場所を探していたんだよ。俺の母さんが信心深くて『自殺はご法度』 て、言っていたから自分で死ねなくてね。誰かに殺してもらいたかった。人でも、酒でも何でも良かった」


 ファイアが昨年秋の徴兵から帰ると、馴染みの飲み屋の主人が戦死し、閉店していた。


「『店開けろ! こん畜生!』 て、泣き叫んで一晩中主あるじがいなくなった店の戸を、叩き続けたね。でもね、苦情言う奴いなかったぜ〜。俺さ〜、この街桃源郷に受け入れられてんだって、気付いたんだよ」


 蜜蝋パブの近所で、気のいい酒場の親父は利き腕を叩き斬られ、仕事ができなくなっていた。

 まだ10歳の息子が後を継ぐと言って、学校を辞め母親と夜遅くまで働いていた。


 …屑同然の自分は無傷で戻って来た。


 飲んだくれている場合じゃない、何かしなければ!


 そう思って桃源郷の看板を自分で描き、飲み屋街の呼び込みを始めてみた。

「あの看板さ〜、戦死した親父の店の机さ、何時も俺が飲んでいた。店の大家がね『オンボロで、中古の店にも売れないから薪にする』 て、言っていたのを俺が引き取って蘇らせたんだぜ〜」


 しかし…呼び込みが下手で周りから『止めろと』 とまで言われた。

「悲しくてね、パブの屋根に登って月に1度行われる汚水槽の掃除を、ぼ~っと眺めていたのさ~」


 何だ、あの少年は!?

 城壁外側の人足のはずが、城壁内側役人の指示を受け、城壁内側の作業を始めた。

 城壁内の人足たちと普通に会話を交わし、昼の休憩もこちらで休んでいる。


 不法侵入者か?


 ザイオンのエージェントにしては偉く若い、若く 見えるだけ?

「確かめたい! 久しぶりに情熱感じたね~。ヘヘ」


 何としても彼に会いたい!!


 ちょうど夕刻になり、気乗りしなかった呼び込みの仕事のはずだったが…

「『この少年を何としても、何としても!桃源郷に呼び込む!』 そう思ってさ~」


 ファイアは、呼び込みの準備をしながら汚水槽の出口を見張った。

「こんな俺でも、誰かの監視と尾行はプロだからね〜」


 そして待っていた。

「凄腕不法侵入者の、お出ましを!」


「あとは、知っての通りさ〜。あれね、俺が道化として食べて行けるようになった瞬間だったね。ギュッタはすごいよ、歳はごまかして酒飲むし、ギルドでも『逃亡の天才児』 の俺をベランダまで追跡してきたんだ。 正直ぶっ飛んだぜ〜。ヘヘ」


 マスターはギュッタの酒盃にアップルジュースを注ぎなたら、

「ファイアは変わったよ、明るくなった。道化するのが不思議なくらい暗かったのに」


「だって、俺の人生道化じゃない? 頑張っても、頑張っても、最後は茶番だ…」


 ギュッタはファイアの言葉を遮った

「私に夢をくれたファイアさんを、茶番では終わらせません! 必ず上級魔道士になり、ここプリエトに帰ってきます!」


 ギュッタはファイアの顔を見て微笑み、皆でこのパーティを楽しんだ。


 パーティーの最中で、ファイア

「あ、桃源郷のお時間だ! 遅刻だぜ~!!」と

 突然叫ぶと同時に駆けて暗闇の結界に消えてしまった。


 マリアは慌てて

「ファイア、ちょっと待って…行っちゃった」


 ファイアは一緒に下宿まで追ってきたギュッタに手伝われ、大慌てで準備を済ませ、桃源郷の入り口に駆けて行った。

 何故かヨナタンまで、息が切れそうなファイアの背を押して走っていた。


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