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夢を語る桃源郷  作者: 四太郎
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付け焼刃

 安息日は終わり、新しい1日が始まった。

 先週のギュッタは、何枚もの鉄板に火炎魔導で穴を開け続けた。

 今週も引き続き穴開けだろうか?

 それとも、新しい実験がギュッタを待っているのだろうか?

 ウルヴァンが作った弁当を鞄に詰め、仕事場に急いだ。


 ギュッタは一番乗りで、クラノス軍の魔道練習場の一角を改造した魔導実験場に着いた。

 的を見ると、木の板ではなくバツ印の着いた岩盤が備えられていた。


 ギュッタ

「残念! 俺一番乗りじゃなかったんだ…」

 すると後ろからマギ主任が

「いいや、君が一番乗りだよ。これは、一昨日の夜半に私が大型のトロール(鬼)を雇って据え付けたのだよ」


 マギ主任は、挨拶もせず仕事の話を始めた。

「先週は、防具の鉄板を試す実験だった。依頼主も変わり今週は武器だ、気合をいれて掛かりたまえ。あ、そうそうお早う、ギュッタ」

 ギュッタ

「お早うございます、マギ主任。お早う、ヨナさん!」

 ヨナタンが後ろからやって来て

「よ~! 新人。今日から俺たちコンビだぜ、ヨロシク~!!」

 暫くすると、ほかの先輩たちもやって来た。

 マギ主任

「お早う諸君。では新しい実験の説明をする、しっかり聞きたまえ」


 マギ主任は、道具箱から不思議な刃物を取り出した。

 片刃で、ダガーより長いがバイキングソードより短く中途半端だ。

 最も違和感を感じるのは、やいば以外は木材で加工されているのだ。

 

マギ

「これは、私が考案した実験用刀剣『付け焼き刃』 だ。これは最低限のサンプルで実験ができる!」

 ヨナ

「それで俺は何を切るんですかい?」

 マギ主任

「ヨナ、君はこの鋼部分でギュッタが放つ魔導を弾き飛ばして欲しい。確実にこの! 刃の部分に当てるのだよ」

 鋼の部分は1センチほどだ。

 ヨナも、ギュッタも結構技術がいる。


 ヨナ

「ガッテン承知! で、魔導は火炎系ですかい?」

 マギ主任

「その通り」

 ヨナ

「ギュッタ! 遠慮は要らねぜ!」

 ギュッタ

「はい! 宜しく。マギ主任、私はあの岩のばつ印を狙って基本の『ファイアー・フォース』 を撃てばいいのですね」

 マギ主任

「フォース(力動)は加えなくていい、杖を振った勢いであの印に当てて欲しい。力を加えると、加速で魔力が増して『付け焼き刃』 の木の部分が焼けてしまう」

 なんと、力動魔導ではコントロールできず、杖の制御だけで的を狙わねばならない。


 ギュッタ

(どうしよう…。ヨナさんに当ててしまったら)


 マギ主任は、水を張ったバケツと細い木の枝を用意していた。

 マギ主任

「君たち、少々待ちたまえ。少し練習してから取り掛かってもらおう」

 他の実験スタッフは持ち場について道具や配置の点検を始めていた。

「ギュッタ、この君の杖と同じ長さの小枝に水を付け、あの的を狙って振りたまえ。ヨナは暫くギュッタのしずくが飛ぶのに合わせて素振りをくれたまえ」

 どうやら練習の練習だ。


 ヨナタン

「マギの旦那、ギュッタが的に当たる様になったら、しずくを弾くんですかい?」

 マギ主任

「その通り。ギュッタ、準備はいいかな?」

 ギュッタ

「はい! 始めます」


 始めたが良いが…何度やっても、しずくが前に飛ばない。


 ヨナタン

「なあ、ギュッタ。お前釣りってやったことあるか?」

 ギュッタ

「はい、春先に近所のお爺さんのお供で…」

 ヨナタン

「そうか…その時竿で釣り糸を投げた感じ、思い出せよ」

 ギュッタ

「はい!」

 ギュッタは、たった一回、1匹も釣れなかったあの感覚を思い起こした。

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