依頼主
小枝の先に水を付け、釣り針を遠くに投げる感覚で振ると、何とかしずくが前に飛んだ
ヨナタン
「よ~し! その調子だ!」
ギュッタは少しコツを掴み、数回小枝を振るとしずくが的に当たる様になった。
ギュッタは心の中で呟いた。
(これなら次バル爺様と釣りに行っても、ちゃんと魚が釣れる?)
マギ主任
「ヨナタン、水滴を弾く練習にかかりたまえ」
ギュッタは、小枝の先を水に浸け、釣り糸を投げる様に小枝を振ってしずくを飛ばしまくった。
ヨナタンは、正面には飛ばない様に弾いているが、時折正面に飛んでくる。
これが魔道だったら偉いことだとギュッタは思った。
マギ主任
「ギュッタ、心配は要らん。魔導は物理とは違い弾かれると消える。ただ、リフレクトの魔導を使われると用心せねばならんがね」
ギュッタの恐怖心を、マギ主任は見抜いていた。
ギュッタ
「リフレクト…反射。光? 属性の魔導ですか?」
マギ主任
「光と水の上級魔導だ、ただこれは味方の救助も弾くから曲者だ」
ギュッタは魔道士として働くことで、魔導実践の知識を深め、技を磨き、上級魔道士になる夢が加速しているが、本人は気づいていない。
ギュッタの放ったしずくは的の付近に飛び、ヨナタンも鋼部分で確実にしずくを弾くようになった。
マギ主任
「それでは、諸君。本番に取り掛かってもらおう。と…言いたいが、昼食の方が先だ」
思いのほか時間が経っていた。
午後からいよいよ実験本番である。
ヨナタンは、実験スタッフに鎧・甲冑を装備してもらっていた。
ギュッタも自分の杖を手に、精神を集中させた。
杖を釣竿で糸を飛ばす様に振り、ギュッタは呪文を唱えた。
「ファイア!」
ヨナタン
「えい、やー!!」
と、ヨナタンは鋼部分で魔導を跳ね返した。
実験成功である。
だが、実験装置『付け焼き刃』は、1本ではなかった。
ヨナタンが刃部分で呪文を跳ね飛ばすのに成功すると、助手が取替え引替えヨナタンに少しずつ形の違う『付け焼き刃』 を渡すのである。
的を撃ち続けた先週とは違い、人に近いところに魔導を撃つため、ギュッタは魔導を撃つ前に、必ず深呼吸をして精神を集中させた。
それでも時々すっぽ抜けを起こし、ヨナタンが跳ね返せないこともある。
ヨナタンも一発で鋼部分に当たらず、空振りや木の部分に当て、火を吹かす時もあった。
実験は思う様に進まず、夕刻を迎えた。
マギ主任
「はい、そこまで。残りは明日行う」
ヨナタンは装備を外してもらい、ギュッタは後片付けを手伝い、今日の実験は終了し、2人ともくたくたになりながら家路に着いた。
ヨナタン
「鎧重い、剣の形は変、大変だったぜ!」
ギュッタ
「剣の形が、どんな風に?」
ヨナタン
「凄げえ~逆反りが効いているんだ。シャムシールやサーベルなんざ、目じゃないぜ!」
実験に使われている刃物が反っているのは気づいていたが、そこまで刃が反っている様に感じなかった。
ファイアが使っていた短刀は猫爪の様に強烈な反りが効いていたのだ。
ギュッタ
「へえ。何故そんなに反りが効いているんだろう?」
ヨナタンは、得意顔でギュッタに説明した。
1. 振り回した時、スピードが出てよく斬れる。
2. 切り裂く力が大きい
3. 同じ刀身なら刃渡りが長い。
「熟練者なら短刀でも、大刀並に敵の首を跳ね飛ばせるんだぜ!」
4. 両刃のソードの様に突くことができず、斬撃に特化した攻撃専科だ。
「突きは向かって来る敵に対し有効な手段で、防御と見なしてよし!」
「殺し屋仕様だぜ。マギの旦那の道具箱をちょい見したんだけど、明日からもっと反り返った柄物を使うみたいだぜ」
(依頼主はファイアさんなのか? )
ギュッタは、自分の出した答えに驚いた。




