夢の1日目
マギ主任
「子豚君! 私も昼ご飯を分けてあげよう。だから飼い主を教えてくれたまえ」
ファイアは『プギー!』 と、ひと鳴きしてマギ主任の手から逃れてギュッタの元に戻ってきた。
マギ主任のファイアへの惚れ込みようは、予想外だ。
昼休みはあっという間に終わろうとしたが…、聞き覚えのある女性の声がする。
「ギュッタ! ご免よ! フレディが着いて来ちまったのかい!? こいつ!! 薬草掘りをすっぽかしたんだよ!」
バルバロッサ婆が息を切らし、小さな飛竜ハナを肩に乗せ、辻褄合わせまでしてファイアを迎えに来てくれた。
バル婆の演技力にギュッタは圧倒された。
ギュッタは、バル婆と目が合い遁走しようとしたファイアを捕まえ、バル婆に手渡した。
マギ主任
「バル婆様!! フレディに仕事がない時は遊びに来る様にして下さい!」
バル婆
「おや、トゥールじゃないの! 駄目だよ! 何故こんなところにいるのさ?」
マギ主任は、ことの次第を説明した。
2人は知り合いで、マギ主任は夢幻堂古書店の常連の1人らしい。
バル婆は、小脇に抱えたファイアの尻を思いっきり叩きながら帰って行った。
ギュッタは午後も、的に貼り付けられた鉄の板目掛けて火炎の魔導を撃ち続け、勤務1日目がそれなりに終了した。
帰りがけにヨナタンから声をかけられた。
「ギュッタ、お疲れさん。どうだい、続けられそうかい?」
ギュッタ
「はい」
ヨナタン
「豚がお前に飛びついた瞬間、俺ビビったぜ。お前、強面の兵隊相手に堂々と言い訳していたな。凄い度胸だぜ!」
ギュッタ
「だって本当に、私のものではないのだから。ねえヨナさん、聞いていいですか? 仕事中見かけなかったけど…」
ヨナタン
「俺かい? 俺の出番はまだだ。だからクラノス軍の教練に参加しているんだぜ、この前の仕事でちょっと怪我したから鍛え直しだ」
ヨナタンは自慢するのが好きだが、仕事熱心で後輩のことも気に掛ける好男子である。
ヨナタン
「なあ、今度一緒に飲みにいかないか?」
ギュッタ
「ありがとうございます! 私まだ13歳なので、お茶の乾杯で良いですか?」
ヨナタン
「うげ! お前未成年か!? 落ち着いているから、15は過ぎていると思ったよ。ハッハ!」
2人は軍事施設の外に出たところで別れた。
ギュッタ
「さあ! 桃源郷に行ってファイアさんに夢の1日目報告だ。フフフ」
ギュッタは、プリエト3番橋を渡り蜜蝋パブの横にある階段を降りて行った。
ファイアが小さな広場で2、3人の客を前にジョークを飛ばしながら、タップダンスを踊っている。
パフォーマンスが終わり、客からお捻りを貰うとファイアは、くるりと振り向き駆け寄ってきた。
ファイアはギュッタを抱きしめ何か言おうとしたが、ギュッタはファイアの口を手で塞いだ。
「どうか謝らないで。俺、嬉しかったから」
ギュッタを抱きしめたファイアの腕が、微かに震えていた。
「ね、ファイアさん。階段に座ろうよ」
ファイアは力なく笑いながら
「無理、尻が痛くて…。婆バアに思いっきり叩かれた」
ギュッタ
「今日は、仕事場の先輩にまた飲みに誘われちゃったよ。それから…」
ギュッタはファイアに、今日の出来事を色々話した。
「ファイアさん、不思議なのは『ファイア・フォース』 火炎の基礎魔導ばっかりなんだよ」
ファイアは耳打ちした。
「だろうな…まだ春だし。知りたかったら、今日狼亭が店仕舞いしてからウルヴァンに聞きな。ここじゃ話せね〜ぜ」
その話は軍事機密だとギュッタは気がついた。
「ファイアさん、帰りは毎晩ここに寄るよ」
表紙用に描いた挿絵をここで使いました。
ちょうどこのシーンを描いたので




