嫌な予感その2
ギュッタの仕事は順風満帆に見えましたが…
仕事が始まり、ギュッタは的の中央に打ち付けられた鉄板目掛け、火炎の魔導を撃った。
一発撃つと鉄板が取り替えられ、ギュッタはひたすら火炎の魔導を撃ち続けた。
マギ主任から同じ調子で魔導を撃つことを求められ、ギュッタは緊張の連続であっという間に昼休みだ。
ギュッタは魔導練習棟を出て、ウルヴァンが用意してくれた弁当を練習場の外の木陰で食べていた。
「何か騒がしいぞ?」
騒ぎに目を向けると、兵隊たちに追われている赤毛の子豚が、兵隊たちを振り切り猛スピードでギュッタに向かって来る。
「わ! 真っ赤な子豚ちゃん。嫌な予感がする!!」
子豚はギュッタに飛びつき、追って来た兵士はギュッタを怒鳴った。
「ここは軍事施設だ!! ペットを連れて来る所ではない!」
ギュッタはキッパリと返事をした
「この子は私のペットではありません、近所の子で…」
衛兵はギュッタの迫力に押され、少し引きながら
「何? お前の子豚ではない、前の職場で一緒に昼飯を…。確かに、こんな目立つ子豚を連れていては施設には入れんな」
ギュッタ
「お昼をあげたら、この子を玄関まで連れて行きます。どうか、勘弁してやって下さい」
衛兵
「了解!! 後でちゃんと外に出せよ。おい、子豚2度と来るなよ!」
衛兵は小言を言うと立ち去った。
ギュッタは子豚を抱き上げ小声で、
「ねぇ、ファイアさんでしょ!」
ファイアはギュッタの耳元で
「ご免、来ちまった…。1人で昼飯食っていると、侘しくて。お前はこのクエストが終われば、グルージヤで修行だ。一緒にいられる時間は長くない」
ファイアの行動は常に可笑しいが、そのオーラは常に悲しい。
ギュッタは子豚のファイアを胸に抱き囁いた。
「大丈夫、プリエト経由のグルージャ巡礼遍路は閉鎖中だよ。まだここに居るから、寂しがらないで」
ファイア
「どうなのかな…」
ギュッタはファイアを隣に降ろし、ランチの半分を彼に与えた。
「子豚ちゃん。食べたら帰るんだよ、帰りに桃源郷に寄るからね」
ギュッタとファイアがランチを食べていると、マギ主任がこちらに歩いて来くるではないか! ギュッタはまずい所を見られ、心の中は穏やかではない。
「ギュッタ、騒ぎが収まったと思えば容疑者がいるではないか。その者を私に見せたまえ」
マギ主任は言うが早いか、子豚のファイアを捕まえ、肩の位置に持ち上げて繁々と眺めた。
「ほう、君は男か。立派な一物にしっかり毛が生えている、一端の成豚だ。ギュッタ、明日から彼を連れて出勤したまえ」
ギュッタ
「主任!! 無茶です! ここ軍事施設です!!」
マギ主任
「私は人間嫌いだが、動物は大歓迎だ! 妙案がある! 聴きたまえ!」
ギュッタは嫌な予感をしながら、マギ主任の妙案に耳を傾けた。
マギ主任
「ギュッタ。彼は既に老成している、小さな体格に変わりはない」
確かに、ファイアは中年男だ。
「この大きさなら暴れても、大した被害は出まい」
マギ主任は、伊達の殺し屋よりも恐ろしいファイアの本性を知らない。
「そこでだ! 私が『今回の実験に参加している』 と一筆書いて事務所に提出し、通行証を付けた首輪をするのだ。これなら脱走しても丸焼きにされる心配はない!」
ギュッタは気配を感じ見上げると、小さな飛竜ハナが、木の枝に身を潜めて凄い形相でファイアを睨んでいる。
「よその子なので…私の一存では決められません」
マギ主任
「お前のペットではないのか…職場で動物の放し飼いが私の夢なのだが。錬金の現場は高温の釜やら重い機材があって、動物が危ないのだよ」
実験場でのファイアの放し飼いはマギ主任の方が危険である。
マギ主任
「そうだ!名案が思いついたぞ!」
ギュッタは、もう嫌な予感しかなかった。




