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夢を語る桃源郷  作者: 四太郎
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道化

 ザンジバルはファイアの机に食後のお茶を置くと、懐から小さな(はさみ)を出した。


 ザンジバル

「おい、今度逃げ出したら、あの少年諸共殺すぞ」


 そう言いながら、ファイアの指の自由を奪っている革紐を切ってやった。

 ファイアは無言で外方を向いていた。


 ギュッタ

「ファイアさん! 逃げようとしたんですか!?」

 ファイアはそっぽを向いたままだ。


 ウルヴァン

「ビビッたぜ!! ギュッタがぶっ倒れて、俺たち慌てていたらコイツ! その隙にお前さんを抱えてプッハッハ…!!」

 ザンジバル

「笑い事じゃない!」


挿絵(By みてみん)


 ギュッタはやっと納得した。

 何故、ファイアがザンジバルに催眠魔導をかけられ、厳重警戒されているのか。


 ザンジバル

「クラノス軍の許可なしで、6名も殺害すれば理由はどうであれ、事情聴取の必要があるだろう」

 ザンジバルに睨まれながらファイアはお茶を飲んでいた。


 ザンジバル

「職務質問中の逃走は犯罪だ。その少年はともかく、元大佐は事と次第による」


 ファイアは飲んでいたお茶をザンジバルの顔にかけてしまった!

「お前本気で殺されたいか! そいつはもうこの世にいないんだよ!!」


 ファイアの目は昼間見ても赤い、人ではない何者かをルーツに持っている様だ。

 燃える様な赤い目で、ザンジバルを睨みつけていた。


 ザンジバル

「自由にしてやったら、いきなりコレか?」

 ファイア

「恩には着ない(たち)でね」

 ザンジバル

「落ち着けよ。ここにファイア・レッド名義で入れば、下手するとファイアが前科者だぞ」

 ファイア

「しょっちゅう豚でも拘置されているさ〜」

 ザンジバルはもう一度、ファイアのティーカップにお茶を注ぎながら

「お前が酒乱で、橋の欄干や広場で裸踊りするからだろ。 さて、昨夜の話を聴かせてもらおう」


 ファイアは暫く黙っていたが、重い口を開いた。

 フロリバンダの騎士団と名乗る男達は辻褄の合わない罪をファイアに着せ、正当な処刑だと言った。

 話を聞けばザイオンの新兵器の秘密をクラノス側に知られたくないらしい。

 秘密を知っているファイアの首に、ザイオンが今更のように金を賭けて刺客に襲わせたようだ。

 ファイアの戦力を削ぐため、一般人で子どものギュッタといる所を狙われた。

「6年前は同じネタで『ホラを吹くな』 と嘲笑われ、落ちぶれたかと思えば今度は『お命頂戴』 か。笑えよ~、道化だぜ~」

 ザンジバル

「誰が笑える? ザイオンのドワーフ乱獲で、無邪気な彼らが今では殆ど見られない。手を打とうとした者が、微笑われ、落ちぶれ、命を狙われ…」

 声を上げて大号泣したのは、王国連合軍特殊部隊として長年ファイアと共に戦ったウルヴァンだった。


 ザンジバル

「兄者! 煩いです!!」

 ザンジバルは向き直ってファイアに話しかけた。

「正当防衛だというのに、何故逃げ出した?」

 ファイアは答えなかった。

 ギュッタがプリエトに不法侵入したことを(おおやけ)に知られたくなかったのだ。


 ザンジバル

「心配は、ザイオン本体がお前の素性に気づけば、今後はザイオンが誇るアサシン軍団が繰り出してくる」

 ファイア

「気づいた可能性低いね。昨夜の連中は騎士団とは名ばかりで、賞金目当ての傭兵だった。」

 ザンジバル

「お前もそう思うか」

 ウルヴァン

「論拠は?」

 ファイア

「奴らの柄物大刀だったが、片刃で刃渡りが多少短い。船上や市街などの接近戦用だった。 騎士団が使う、大振り両刃の騎馬戦・白兵戦用ではなったね。」

 ギュッタ

「あの、いいですか? 何故彼らが傭兵なら『ザイオンは気づいた可能性低い』 のですか?」

 ファイア

「傭兵は個人事業主だからね、美味しい話は自分たちで止めている可能性が高いんだぜ〜」

 ザンジバル

「取り敢えず2人とも、暫く腹を下しておけ。俺は先に食器を片付ける、兄者は鍵を閉めて出て行って下さい」


 こうして2人は、クラノス軍の救護室で傷を直すことになったが。

 ギュッタは夢が吹っ飛びそうな事態に気がついた。

今ではウルヴァンがファイアの身元保証人ですが、昔はファイアの方がオペレーション・リーダーでした。

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