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最後のハイエルフは甘いものがお好き  作者: ほむら


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44 フギンとムニン

「「わたし(ボク)たちは双子の烏の幻獣で愛し合っているんだ」」


「「「っ???」」」


双子の烏だというフギンとムニンはお互い深く愛し合っている。

そんな兄弟(姉妹?)間での禁断の愛の告白にみな呆気にとられていた。


「は?双子って事は兄弟だか姉妹って事だろ?ダメだろそれ!」


とラタトスクの常識的な発言にアキッレが追従する。


「ホントの双子じゃないとか?」


「「ボク(わたし)達は同じ卵から産まれたホントの双子だよ」」


間髪入れずにフギンとムニンが否定する。


「にゃんと、ホントに双子で愛し合ってるってことにゃ。ところでどっちが雄でどっちが雌にゃ?」


ペロは否定も肯定もせず素朴な疑問を言葉にするとフギンとムニンはお互いの手を指を絡ませ繋いだ。

恋人繋ぎである。


「雄とか雌とかどうでも良いだろう。精霊とはいえやっぱり猫は俗物的だな」

「所詮猫だね。性別とかどうでもいい。ボクにはフギンが居ればいいんだ」

「わたしもムニンが居れば後はどうでもいいさ」


フギンとムニンはペロを小馬鹿にして熱っぽく見つめ合った。

ペロは些か憤慨したがリーシャが一歩前に出ると何も言い返さなかった。


「うんうん。わたしにはまだ愛し合うというのが分からないが愛は素晴らしいものだ」


頷きながら喋り出すリーシャをフギンとムニンは無表情で見つめる。

リーシャは二人を見つめ話し続けた。


「同時に生まれ死ぬまで共に生きるべく愛し合う二人か。わたしにも兄が居たが兄はわたしにとって大切な人でとても愛していたよ。でもそれはフギンとムニンの愛とは違うのだろうな。


わたしには二人はそれよりもお互いを深く想い愛し大切にしているように見える。

それこそ魂の片割れのように。


双子として生まれ互いが何よりも大切にしている。お主らが子供の姿をしているのは欲望で肉体的に愛し結ばれるより心から想い合う事をお互いに望んで成長を止めたのだろう」


その言葉にピクリとフギンとムニンの目が揺れた。


「愛の結晶である子を成すより、二人だけで共に生きる事を選んだ。とても重く深い決意だ。それを禁忌などと簡単に否定などわたしは出来んな。


それどころか禁忌を畏れぬお主らの魂と愛をわたしは心から祝福しよう」


突然語り出すリーシャに一同困惑気味である。


『ぐふっ!ぐはははははっ!』


少年の姿をしたオーディンが我慢出来ずにしゃがれた声で笑い出した。


『流石ハイエルフよ!禁断の愛ですら祝福とはな!どうだ、フギン!ムニンよ!』


オーディンが普段表情が殆ど動かないフギンとムニンを見やると二人は薄く笑みを浮かべた。


「わたし達を祝福してくれた」

「ボク達は貴女の使い魔になりたい」


その言葉にリーシャが困惑する。


「そんなつもりで祝福したのではないぞ。心からそう思っただけだ」


「わたし達はオージン様以外、誰からもこの愛を認めて貰えなかった」

「ボク達はずっと世界から隠れ逃げていた」

「蔑まれ嫌われ者の(からす)で」

「双子で愛し合う禁忌」

「わたし達を嫌う連中に追われ石を投げられて」

「心無い言葉の刃で傷付けられ打ちひしがれていた時」

「オージン様だけがわたし達を見つけ救ってくれた」

「オージン様だけがボク達の愛を認めてくれた」

「でもオージン様は死んでしまった」

「ボク達を認めてくれる人は居なくなった」

「わたし達はせめてオージン様を微かに感じるこの槍の中に隠れた」

「ずっとずっと長い時間二人だけ」

「わたしにはムニンが居ればいい」

「ボクにはフギンが居ればいい」

「でもわたし達の愛を誰かに認めて欲しかった」

「ボク達の愛が真実である事を誰かに知って欲しかった」


フギンとムニンがリーシャを真っ直ぐな瞳で見つめる。


「「貴女はわたし(ボク)達の愛を祝福してくれた」」


フギンとムニンは血の繋がった双子の(からす)であった。

産まれたその時からお互いを大切に想い愛した。

家族ではなく恋人として。

しかし近親間での愛はこの世界では禁忌とされていた。


(からす)は知恵が高く畑を食い荒らす害獣として人々から嫌われている。

さらに禁忌を犯したフギンとムニンは同族からも疎まれ追われた。


逃げ出した二羽の烏は黒い羽根を活かし闇に隠れ音を消し世界を飛び回って二人だけの居場所を探した。

しかしこの世界は逃亡するフギンとムニンに安住の地を与えなかった。

逃げても逃げても認められず追い払われる日々。


そこで二人の前に現れたのは半神オージン。

世界中を飛び回り隠れ逃げて来たフギンとムニンのその能力に目を付けたのだ。


『我の為に世界中の情報を集めるなら、名を与えその愛を認めよう』


こうしてフギンとムニンはオージンの使い魔となり幻獣へと昇華した。

二人の能力である世界中を逃げ回る事で手に入れた高速で駆け巡る飛行能力と隠れ潜む隠密能力はオージンの使い魔となったことでより向上した。

戦闘能力は皆無だがこの力を使いフギンとムニンは毎夜闇に隠れ旅立ち見聞きした情報を記憶し毎朝オージンに伝えていた。


オージンが大罪に堕ちフェンリルに喰い殺されるまで。


そして居場所を失ったフギンとムニンはオージン亡き後、神滅の雷槍(グングニル)の中にずっと隠れ住んでいたのだった。


そしてオージンの力の残滓が怨念と瘴気に塗れ穢れ神として存在するようになり長い時を経て浄化したハイエルフが現れた。

彼女はかつてのオージン程では無いが高い神力と強い魔力を併せ持ち二人にとってそれは心地良い力だった。


浄化され精霊化したオージン(今はオーディン)とは主従関係は無くなったが、彼に呼ばれ素直に顕現すると目の前のハイエルフは二人の愛を偽りなく祝福したのだ。


二人はほぼ無表情であったがその祝福に心震えていたのだ。



「世界中を飛び回ったり誰にも見つからないように隠れたり凄い能力にゃ」


ペロはフギンとムニンの能力を知って感心して、ふとラタトスクに視線を向けた。

ラタトスクはムッとする。


「何だよ猫」


ペロは意地悪い顔でニヤリと笑う。


「同じ幻獣種でもすばしっこいだけの栗鼠とは大違いにゃ〜」

「何だと!お前だって馬鹿の一つ覚えみてぇに結界しか張れねぇ馬鹿猫じゃねーか!」


カチンときたラタトスクはペロに襲いかかる。

お互いに戦闘能力ほぼ皆無の猫の精霊と栗鼠の幻獣の争いである。

その様子をリーシャは生暖かい目で見ていた。


「貴女は恩人であるオージン様を救ってくれた」

「だから貴女はボク達の恩人でもある」


フギンとムニンはペロとラタトスクには目もくれずリーシャの前に一歩歩み寄る。


「ふむ。わたしの使い魔となっても特にやる事は無いかもしれぬよ」


少し困った顔でリーシャは言うが特に断る理由は無かった。


「わたし達は何処へでも飛んで見聞きし記憶出来る」

「ボク達と一緒に居ればあらゆるモノから隠れる事が出来る」


リーシャは仕方がないといった様子で優しく微笑んだ。

まるで慈愛の女神のように柔和で美しい微笑みだった。


「そうか。ではわたしと一緒に旅をしよう。お主らを祝福する者にもっと出会えるように、な。改めてわたしはハイエルフのアルティリーシャナンララ。リーシャと呼んでくれ」


フギンとムニンは一度お互い顔を合わせて薄らと目を細めて笑顔を綻ばせた。

二人はリーシャに顔を向けて頭を下げた。


「「ありがとうご主人様!」」


こうしてリーシャの旅の道連れに新たな精霊オーディンと烏の幻獣フギンとムニンが加わった。





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