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最後のハイエルフは甘いものがお好き  作者: ほむら


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37 アキッレ

お待たせしました。



あらすじ:ハティの集落で宿泊したリーシャ達。

翌朝、リーシャはアウリッキにハティを全員集めさせた。


「私達と一緒にフェンリルの里へ誰か一人着いてきてくれ」


ハティ達はざわめいく。

何も聞かされていなかったハティの長アウリッキもリーシャの思惑が分からず眉を顰めた。


「あの、リーシャ殿。我々はフェンリルの里へ行ったことはありませんので道案内は出来ません」

「ああ、そうではないよ。お主等を縛る盟約を新たにするためより強いフェンリルに加護してもらう為だ」

「...え?」


ハティ達はリーシャの言葉の意味に理解が及ばず動揺が拡がる。

しかしリーシャはそんな動揺など気にした様子もなく続けた。


「この死して門となったフェンリルとエルフの王の間にどの様な盟約がされたかはわたしも知らぬ。

お主等はこの門となったフェンリルに加護されハティとなった一族だろう。

その為にフェンリルが縛られた盟約にお主等も縛られてこの地を意味も分からず護り続けている。

ならばお主等がこの地に縛られず自由に生きる為には新たなフェンリルに加護してもらうか盟約を新たにするしかなかろう」


唖然とするハティ達。


「そんな事が可能なのですか...?」


アウリッキが恐る恐る口を開いた。


「さあ、分からん」

「は、え?」

「そんなのは可能かどうかは分からんよ」

「そんないい加減な...」


アウリッキはぞんざいな扱いを受け肩を落とす。

後ろに控えるハティ達も俯き項垂れた。


「ならばイシルディンで作った結界も失ったこの地で未来永劫に門を護り続けるしかないだろう」

「...イシルディンを作っていただけないのですか?」


リーシャは嘆息する。


「わたしがそこまでする理由がないのだよ。何よりもイシルディンは材料も精製方法も教える事は出来ぬくらい貴重で危険なものだ。

困っているから頼まれて作る、という程簡単では無いのだ。

例え直ぐに作らなければいけない状況になったとしても材料を用意するには数十年は必要になるだろうしな」

「そんな...」


アウリッキをはじめハティ達はリーシャがイシルディンを作って結界を張り直してくれる事を期待していたのだろう。

リーシャがハイエルフと聞いて伝説の上位種族が万能であり神の如き慈愛を以て希望を叶えてくれるに違いないと思い込んでいたのだ。


「それにイシルディンを手に入れたとしてお主等は盟約の力は未だ切れておらん。お主等一族は永久にこの地に縛られたままで良いのか?」


ハティ達は顔を逸らし口を閉ざした。

そんな中アウリッキが絞り出す様な声で訴える。


「我等はこの門を開ける者が訪れるまで護れ、と先人より伝えられて来たのだ...。そして貴女は門を開けた。それでも我等を縛る盟約は果たせていないというのだろうか」


リーシャは少し困ったように眉を顰める。


「先ずお主等を縛る盟約にハイエルフが関わっていない以上わたしがどうこうする事は出来ぬ。

その上で話を聞いて欲しい。

わたしが門を開く事で盟約を果たしたと云うならばフェンリルの骨からイシルディンの魔力は離れ崩れ去るだろう。

それがまだ力を失わず活きているのは、盟約の中に別の条件があるからだろう」


ハティ達はリーシャの紡ぐ言葉を聴いていた。


「恐らくだがエルフ側に傾いた盟約に感じるのでエルフの王に頼むのは無駄だろう。

それならばこのフェンリルよりも力のある個体に新たに加護して貰えば盟約を破棄、最悪でも改変は出来るだろう。

かなり強引であるがな。

わたしもその手伝いはするつもりだよ。

ただし、フェンリルが新たに加護を与えるかどうかはお主等次第だ」


ゴクリと誰かが唾を飲む。


「そして、もうひとつ」


人差し指を立てるリーシャ。


「フェンリルの里にこの門となったフェンリルより強い力を持つ個体がいなかった場合は加護を貰えても盟約を変える事は難しいだろう。

こればっかりはわたしも全く分からん。

このフェンリルの骨は相当に力を持っていたのは分かるが、わたしもフェンリルに会うのははじめてだから実際フェンリルの中でどのくらいだったのかは判別出来ない。


選ぶのはお主等だ。


新たなフェンリルの加護を得るためわたしと共に行くか。

未来永劫この地で縛られるか。

ふたつにひとつだ」


ハティ達は顔を見合せて頷きあった。

誰一人迷いの無い顔でリーシャに向けて頭を下げた。


「上位種族であるハイエルフの貴女がこの地に訪れたのはきっと我等にとって偶然ではなく運命であったのだろう。

我等が新たに進む道をこうして示してくれたのですから。

フェンリルの里へ共に同行させてください。

よろしくお願いいたします」


狼は誇り高い。

狼の獣人であり、神獣フェンリルの眷族ハティは更に誇り高い。

死を目の前にしても決して恐れず折れぬ生まれた時より誇り高い魂の在り方を持つ戦士の一族ハティが頭を下げた。

それはリーシャに対し最上の礼であった。

戦士らしく潔い姿にリーシャは好感を持った。





ハティの代表となったのはまだ幼さの残る少年だった。

アウリッキの息子アキッレは小柄なリーシャと同じくらいの背丈だが大人用の長剣を腰に差していた。

勝ち気そうなツリ目の少年はリーシャの前に一歩出てハティの長であるアウリッキが紹介した。


「私の息子アキッレは私の次に腕が立ちます。新しきフェンリル様に加護をいただくなら若く強い者が相応しいでしょう」

「ハティが長アウリッキの息子アキッレです。足手纏いにならない様にしますのでよろしくお願いします!」

「ああ、よろしく。アキッレ」


リーシャ一行はアキッレを加えてフェンリルの里へ向かうためフェンリルの頭蓋骨に魔力を流した。


お読みいただいきありがとうございます♪



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