30 至福のハイエルフ
あらすじ:栗鼠の幻獣が来た
ペロに対して悔しがりながらもひと睨みされるだけで怯えるラタトスク。
表情豊かな上にモフモフの小動物はリーシャの琴線に触れた様で、ペロから手を離し指先でラタトスクをこしょこしょと撫で回し始めた。
「な、何をッ!俺様を懐柔するつもりっ...あっ!はふぅ〜」
「はにゃっ!」
リーシャは指先を器用に動かしながら頭、鼻先、背中、喉元を撫で回す。
撫でる手がラタトスクに回されたペロがショックを受けて、訴えるようにリーシャの膝上で手を伸ばしてラタトスクを撫で回す腕にしがみついた。
「ほぇぇ〜」
リーシャのテクニックに陥落したラタトスクは腹天になり腹を撫でられ至福の表情をして全てを受け入れている。
彼が栗鼠でなければ18禁の表情だろう。
ペロは唯一であった筈のもふもふの癒しとしての存在意義を奪われそうで必死に腕にしがみつき頭を擦り付ける。
リーシャはもふもふを甘やかしつつもふもふに甘えられるという至福の時間を堪能しまくった。
「ふふふ...里でも動物たちはみんなわたしの撫で捌きに腹を見せたものだ」
かつてハイエルフの里で熊や鹿、栗鼠や兎などを撫で回して続けて500年。
リーシャにもふもふ撫で回しスキルがあるのならLvMAXに近いだろう。
ラタトスクがヨダレを垂らしながらぐったりとしたのでソファーに寝かし付けると今度はペロを撫でる。
ペロもお腹を見せたのでわしゃわしゃと指を開いて掻く様に撫でるとペロもゴロゴロと喉を鳴らして気持ち良さそうに受け入れていた。
「リーシャさん、ご飯でーす」
マリーの声にリーシャは素早く反応する。
ドアを開けるとマリーがトレーに乗せたパンケーキをテーブルに置いた。
「ありがとうマリー!」
リーシャの女神の如き笑顔にふらつきながらも小熊の蜂蜜亭の看板娘マリーは仕事を忘れない。
「おふっ!今日も眩しいわリーシャさん...んんっ今日は新作ですよ!リーシャさんはチョコレートが好きだってオルソンさんから聞いたので、マスターが色んな意味で頑張っちゃったみたいです!」
「プラウドの新作パンケーキッだと!」
リーシャは瞳にハートを浮かべながらパンケーキを見る。
「その名も【生クリームたっぷりチョコレートソースがけパンケーキ】です!」
小さめの胸をバァーンと張るマリー。
リーシャは神の雷を食らった程の衝撃を受ける。
ドーンッ
瞳は消え白目になり黒いバックに稲妻が走った!(イメージ映像)
「チョコレート、ソースだと...?この茶色のソースはチョコレートをソースに...?」
くんくんとその甘い香りを嗅ぎながら頬に一筋の汗が流れ落ちる。
「しかもパンケーキには仄かに不凋花の蜂蜜の香り...蜂蜜をかけるのでは無く、まさかパンケーキの中に練り込んだのかっ!」
振り返るとマリーはニコニコと満面の笑みを向けた。
「流石ですね、リーシャさん。食べる前にそこまで気付いちゃうなんて」
リーシャは両手で顔を覆って天を見上げた。
「なっ!なんという至高の食べ物っ!!チョコレートをソースにするという究極の贅沢!プラウドの最高傑作であるパンケーキに蜂蜜を練り込むなど神の不文律を犯す程の改良ではないのか!?それを...それを組み合わせるなど...ッ!!!」
テンションが上がり過ぎておかしな事を言い出し震えるリーシャ。
マリーは「では後で感想教えてくださいね」と出て行った。
ソファーに座って、一呼吸置いたリーシャは震える指でパンケーキをナイフで一口大にカットする。
柔らかなパンケーキは簡単に切れた。
フォークに指した小さめにカットされたパンケーキからはチョコレートソースがトロリと垂れそうになった。
一滴でも零すまいとリーシャは咄嗟に口に運ぶ。
パクリとフォークごと口に入れてリーシャは大きな眼を更に見開いた。
お口の小さなリーシャは唇にチョコレートソースが付いてしまったがそんな事を気にする余裕は無かった。
口の中に拡がる濃厚なチョコレートの香り。
舌の上で溶ける甘みを際立たせる仄かな苦味。
パンケーキを齧ると柔らかなふわふわの食感と蜂蜜が練られた所がねっとりとした食感が楽しめた。
そして後から上品な不凋花の蜂蜜の上品な香りと甘味が口内を支配する。
「〜ッ!!!!」
よく噛んで味と香りを心ゆくまで堪能し、こくんと飲み込む。
ブルブルッと全身が震えた。
ほんのりと頬を紅く染めて蕩ける笑顔でハァ〜と息を吐くリーシャ。
「ッッッ美味しい〜〜〜」
「にゃっ!主、僕の分もあるにゃ!?」
気が付いたペロがリーシャとテーブルの上にあるパンケーキを交互に見る。
リーシャはいつもペロの分も注文してあるので、手を付けていないもうひと皿をペロの前に寄せた。
「美味そうにゃ!」
ペロは肉球と短い指で挟みながら器用にフォークとナイフを使いパンケーキを食べ始めた。
「うにゃ〜〜美味いにゃ〜〜」
リーシャが二口目を口に入れようとすると視界の端にダラダラとヨダレを垂らしながらパンケーキを見つめるラタトスクが居た。
リーシャは口を大きく開けたままフォークの先に刺したパンケーキと、ヨダレでベタベタになりながらこちらを見つめるラタトスクを交互に見て動きを止めた。
口元まで運んだフォークに刺したパンケーキから甘いチョコレートソースの香りがリーシャの食欲を刺激する。
口へ運ぼうとするがラタトスクの痛いほどの視線が突き刺さる。
10秒程停止した後、リーシャはフォークのパンケーキをラタトスクに差し出した。
「おっ!いいのかっ!?いただき!」
遠慮なくフォークから外したパンケーキを食べるラタトスク。
手も口周りもチョコレートソースでベタベタになりながらラタトスクには大きめのパンケーキを口に押し込む。
幻獣とはいえやはり栗鼠なので頬袋を膨らませながら食べるその姿はあざといながら庇護欲をそそり、リーシャは微笑む。
するとペロがフォークに刺したパンケーキをリーシャに差し出す。
「あーんにゃ、主」
「ふふっありがとうペロ」
ペロの優しさにリーシャは胸の奥が温かくなった。
ペロのフォークをパクリと食べてお返しにペロにもあーんとパンケーキを差し出す。
こうしてリーシャは約三分の一をラタトスクに分け与えながらも、ベロと至福の時を楽しんだ。
お読み頂きありがとうございます(〃・д・) -д-))ペコリン
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