21 マララガン
更新遅くなりました(〃・д・) -д-))ペコリン
あらすじ:初依頼から無事帰還したリーシャ達。
【防人の丘】から【小熊の蜂蜜亭】に帰って来てからリーシャはベッドにうつ伏せに倒れて深い溜息を吐いた。
上位精霊を身体に降ろすのは体力も魔力も疲弊する。
魔力の方は【防人の丘】の濃い魔力を直接吸収していたので枯渇する事は無かったが、相当に体力を使ったし普段使わない筋肉も酷使したので身体のあちこちが悲鳴を上げていた。
ふかふかの枕に顔を埋めながら息を吐くようにひとりごちた。
「あー、イエレナに告げるの忘れた...いや、気付いてる、か...」
枕に埋もれたまま思考も沈んでいく。
気の利くケット・シーはリーシャの背中から腰を肉球ふみふみマッサージしている。
リーシャは手を伸ばしてケット・シーをひょいっと胸に抱き抱えると赤子のように丸くなって微睡みに包まれゆっくりと瞼を閉じた。
柔らかな温もりに包まれたケット・シーは連られてとろんと重くなった瞼を閉じた。
静かになった部屋のドアがギイーと小さな音を立てて少しだけ開くとボロボロの服を着た小人の姿をした精霊ブラウニーが入って来た。
ブラウニーはキョロキョロと部屋の中を見廻す。
特に掃除も片付けも必要なさそうだったのでリーシャの靴をそっと脱がしてベッドの脇へ綺麗に並べると鼻歌交じりで機嫌良さそうに部屋を出て行き、静かにドアを閉めた。
気が付くとリーシャは前も後ろも右も左も真っ白な霧の中に居た。
「しゅな!しゅーなーっ!」
必死になって叫ぶリーシャのその声と姿は今よりも随分と幼かった。
人族なら3〜4歳の頃だろうか。
涙を堪えながら呼ぶ【しゅな】とは【ハルクリシュナエール】、それはリーシャの亡くなった兄の愛称だった。
(ああ、これは夢だ)
「リーシャ」
少しハスキーで柔らかな声が聴こえた。
リーシャはその声で名前を呼ばれるのが大好きだった。
幼いリーシャが声のする方を振り返ると、大好きだったその人が居た。
リーシャと同じ輝く金糸の様に輝く長い髪、同じ色の長い睫毛に縁取られた切れ長の眼には神秘的な紫紺の瞳。
恐ろしい程整った女性的な顔立ちだが、意志の強そうな眉と背が高く引き締まった体付きで男性だと分かる。
先日看取った兄ハルクリシュナエールだった。
(ああ、変わらないな...いや、変わるはずが無い、か)
「しゅなー!」
兄のシュナが目線を合わせる様に膝を着いて両手を広げると、幼いリーシャも両手を広げ勢いよく抱き着いた。
シュナに強く抱き締められると泣きべそをかいていたリーシャは笑顔になった。
「不安にさせてしまったね、ごめんよリーシャ」
「しゅなー」
細く長い指で髪を梳くように撫でられてリーシャはご機嫌になった。
その感触を匂いを確かめる様にシュナの胸に顔をグリグリと埋める。
(ああ、細いのに大きくて暖かい)
シャナの魔力がゆっくりとリーシャの中へ流れてくる。
シャナの温もりと匂いに包まれてシャナの魔力とリーシャの魔力が少しずつゆっくりと指先から髪の先まで全身を巡り混ざり合うのを感じるその時間は何よりも心地好く幸せだった。
幸せな温もりが消え、景色が変わった。
シュナと鎧を付けた人族の男が精霊樹の下で何か話していた。
見覚えのあるその男をリーシャは知っている。
アーサー・ストヴァル・アストリア。
(あの日の夢か)
アーサーが迷い偶然訪れたハイエルフの里から旅立つあの日。
二人がリーシャに秘密の話をしていたのを覚えている。
仲間外れにされた気がして二人に問い詰めても「なんでもないよ」と涼しげにシュナが言う。
あからさまに【秘密】にされた事でリーシャが頬をぷくっと膨らませると、シュナは何も言わず髪を撫で、アーサーは苦笑いをして誤魔化した。
(そんな風に笑っていたな)
逢いたい。
二人に、シュナに、アーサーに逢いたい。
叶うはずの無い願いと共に浮上する意識。
眼を開けると見慣れぬ天井が目に入った。
薄暗い周囲を窓の向こうの朝焼けが仄かに照らす。
ふかふかのベッドともふもふの抱き心地で此処が宿の部屋である事を思い出した。
頬が濡れている感触に気付いた。
リーシャは指先で目尻の涙を拭うと、ケット・シーを一撫でして半身を起こした。
力を入れて伸びをすると身体が軋んだ。
靴が脱がされベッドの脇に並べられているのに気付いた。ブラウニーの仕業だろうと検討を付けるが、それすらも気付かない程深く眠ってしまっていた事にリーシャは怪訝な表情を浮かべた。
ハイエルフの里では精霊の気配に気付かない事は有り得無かった。
体力の回復も遅い気がした。
里を出てまだ数日だが変化の無いハイエルフの里での暮らしに比べ色んな事があったので疲労が蓄積しているのかもしれない。
リーシャは今日アーサーの子孫に逢いに行こうと決めて、シャワーを浴びることにした。
「リーシャ様、起きてますか?」
コンコンと扉をノックした後、イエレナの声が聞こえた。
ちょうどシャワーから上がったリーシャが服を着てから、彼女を招き入れた。
イエレナは疲れが残っている様子でげっそりとしていた。
「おはようイエレナ」
「おはようございます」
少し困った様子のイエレナは導かれるまま椅子に座ると、リーシャはベッドの端に対面に座る。
「あの...」
言いにくそうにチラリと自分の背後に少しだけ意識を向けるイエレナ。
「さすがだな、気付いたか。わたしも昨日言いそびれていたんだ」
「...っ!」
「お主に興味を持ってこそこそと着いて来たのは、雷の上位精霊マララガンだ」
「マララ...ガン?」
イエレナが首を傾げて何も無い背後を振り返った。
昨夜疲れて寝ようとした時、違和感を感じたイエレナ。
しかし精霊の気配であるのは分かっても、姿は見えずその力も分からなかった。
害意は無いとは分かったが、一晩中すぐ近くに正体の分からない謎の精霊が居たのでろくに眠れなかったらしい。
感知出来ない謎の精霊。
精霊魔法の使い手としては情けないが、そのままにしておく訳にもいかない。
リーシャに訊きたくても疲れて寝ているだろうと朝まで待っていたらしい。
「昨日、イエレナが雷の精霊を上手に扱っていたのを見て、興味が出たのだろう。あまり表に出て来る事も少ないので知られていないが、天候を変える程の力がある精霊だ」
「ええっ!?」
リーシャがパチンと指を鳴らすとイエレナの背後に少年の姿をした精霊が現れた。
『あっ!』
少年の姿をした精霊マララガンはチカチカと全身が光を放ち、髪の毛は逆立ち一本一本が雷そのものというド派手なものだった。
『お前!せっかく隠れてたのに!』
「ふむ。相変わらず派手だな」
『だから隠れてたのに!』
「お主が隠れていたらイエレナが不安だろうに」
『眩しくて嫌われたら意味無いじゃん!』
「嫌われる?」
『そうだ!お前責任取れよな!』
「ぷっ」
ふよふよと宙に浮きながらリーシャと口喧嘩するマララガン。
まるで仲の良い姉弟喧嘩のような様子にイエレナが思わず笑いをこぼした。
腰痛で更新が出来ずにいました。
毎日は難しいですがもう少し空けずに更新出来るように頑張ります。
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