16 精霊の愛し子
一度書いたのに投稿する前に間違えて消してしまい遅くなってしまいました˚‧º·(´ฅωฅ`)‧º·˚
あらすじ:宿屋のマスターから防人の丘までの護衛とそこを護るスプリガンとの交渉依頼を受けたリーシャとイエレナ。
リーシャとイエレナはプラウドと共に冒険者ギルドへ向かった。
今回、冒険者ギルドを通した依頼にするためだ。
本当はプラウドは冒険者ギルドを通さず個人で依頼するつもりであった。
しかしリーシャが冒険者ギルドに登録したばかりという話を聞いて、ギルドで依頼を受ける形にした。
一度でも依頼を受けておいた方がリーシャの為にも色々と都合がいいだろう。
かつてはB級冒険者であったというプラウドの助言と賛同するイエレナに素直に従った。
とちらにせよギルドマスターから冒険者証を受け取る必要もあったので一緒に向かったという訳である。
「防人の丘までの護衛依頼でイエレナさんとリーシャさんご指名ですね」
「ああ、先に二人には話を通してある」
冒険者ギルドのカウンターでプラウドの提出した依頼書を確認する受付嬢。
プラウドの言葉に受付嬢は後方にいたリーシャとイエレナが頷くのを見て手続きを進めた。
イエレナが首からチェーンで下げた銀版を見せる。
この銀版が冒険者証で身分証にもなるのだ。
リーシャは冒険者証をまだ受け取っていないため、ケット・シーを抱いてもふもふを堪能している。
そんな猫を抱いた美少女エルフにギルド内に居た冒険者達からチラチラと視線が向けられていた。
「あのエルフ昨日の娘だよな」
「ああ、上位精霊使ったとかいうエルフの美少女か」
「確かに可愛いな」
「ガイウスを一瞬で押さえつけてたぜ」
「マジか!うちのパーティーに誘うか」
「バカ!アレンさんと一緒にいたから【疾風迅雷】に入ってるだろ」
「見ろよ【氷のエルフ】様と一緒にいるじゃねぇか」
「可愛い...はぁはぁ」
耳の良いリーシャは冒険者達の噂話が聴こえていたが、自分の事だとは思っておらず安定のガン無視である。
依頼受注の手続きはスムーズに終わりプラウドが席を立った。
明日の朝出発する事に決まったが、その間店がマリーひとりになってしまうので臨時の手伝いを姉に頼みに行くとの事だった。
イエレナも【疾風迅雷】のメンバー達に明日別行動になることを伝えに行くという。
後でリーシャの部屋へ来るというので了承するとイエレナはギルドを後にした。
受付嬢は冒険者証を渡す為、ギルドマスターのヴァイスが待つ二階へとリーシャを案内した。
二階に上がると昨日と同じ部屋に通される。
そこにはヴァイスが座って待っていた。
テーブルの上にはいくつかの書類と皮袋、革紐が結ばれた銀の冒険者証が置かれていた。
「来たか」
少し顔色が悪そうなヴァイス。
かつての弟子を犯罪者として捕える事となり取り調べや後処理等に追われて殆ど寝る暇もなかったらしい。
「昨日はすまなかったな。馬鹿弟子が迷惑をかけた」
リーシャが座るなり頭を下げるヴァイス。
「わたしは別に。ただ友人を傷付ける者を許せなかっただけだ」
「...そうか」
「頭を下げるならわたしじゃなくてアレン達や今まで彼奴らに傷付けられた者達にするべきだ」
「...っそうだな。とにかくすまなかった。そして感謝する」
頭を上げたヴァイスはリーシャに冒険者証を手渡した。
冒険者証にはリーシャの名前と星が三つ、そして王都アヴァロンと刻まれていた。
名前は勿論登録名である。
星の数は冒険者ランクのFが星無しでランクが上がると一つづつ増える。
Cランクのリーシャは星三つという訳だ。
街の名前が刻まれているのは王都アヴァロンで登録した事を示している。
書類をリーシャに見える様に向ける。
書類は現代語、新ファーラン語と呼ばれるこの世界の共通言語で記載されているのだが、ハイエルフの里で引き篭っていたリーシャは2000年前まで共通言語とされていた古代ファーラン語までしか読み書きが出来なかった。
余談ではあるがリーシャは古代エルフ語、エルフ語、精霊語、古代ファーラン語の会話と読み書きが出来、会話だけなら現代語(新ファーラン語)、獣人語、竜語が可能である。
「読めるか?」
「ふむ...何となくだな。書くのはまだ難しいな」
読めた。
リーシャは更にハイスペックになった。
念の為口頭でヴァイスが読み上げながら説明をする。
書類は冒険者ギルドの規則と冒険者ランクの説明だった。
冒険者ギルドでは法を破る犯罪行為が発覚した場合、冒険者証とランクを剥奪し拘束の上騎士団へ連行する。
冒険者ランクは通常Fから始まりSが最高ランクとなる。
依頼達成件数、依頼成功率、戦闘能力、人格などを加味してランクが上がるという。
あまり興味の無かったリーシャが欠伸をしたところでヴァイスは「チッ」と舌打ちをして皮袋を渡した。
「?」
「ガイウス共を捕縛した謝礼だ。受け取ってくれ。勿論アレン達にも別に渡すからコレはお嬢さんの分だ。金はあっても困らんだろう」
「ふむ。では有難く貰っておこう」
皮袋にはアークキマイラの魔石の半分ほどの金額が入っていたが、未だ金銭の価値が分からないリーシャは中を確認もせずに腰に下げたポーチに閉まった。
「では世話になったな」
「ああ...で、アーサーの子孫にはもう会ったのか?」
「いや、まだだ。この街の一番大きい家...城に居るんだろう?祝福の気配はあそこから感じる。アーサーが居ないなら急ぐことも無いだろう。明日はイエレナと護衛の依頼があるしな」
「そうか」
「ではまたなヴァイス」
リーシャが部屋を出て行くとヴァイスは大きく嘆息してガシガシと頭を掻きむしった。
「仕方ねぇな〜。一応パーシヴァルの小僧に伝えてやるか...」
リーシャが降りると先程の受付嬢が「お疲れ様でした」と声を掛けてきたので笑顔で「世話になったな」と応えるとざわめきが起こった。
「天使かっ」
「いやエルフだろ!」
「美少女過ぎる」
「あの笑顔の為なら死ねる」
「あの笑顔のまま踏まれたい...はぁはぁ」
何となく寒気を感じたリーシャは早々に冒険者ギルドを後にして【小熊の蜂蜜亭】へ帰った。
リーシャの胸に抱かれていたケット・シーは冒険者達に威嚇していたが効果があったかは不明である。
宿屋に戻るとプラウドと見知らぬ背の高い男女が話をしていた。
男性の方は茶色の髪色と瞳で人の良さそうな柔らかな雰囲気だ。
女性はプラウドと同じ獣耳と髪色だったので恐らく彼女がプラウドの姉だろう。
気の強そうなつり目だが人懐こそうな笑顔が印象的な美人である。
「あなたがリーシャちゃんね!超美少女じゃない!弟が迷惑かけるけどよろしくねー!」
捲し立てるような挨拶と共に抱き着かれた。
背が低めなリーシャは避けることも出来ずに彼女のふくよかな胸に挟まれた。
プラウドに注意され開放されたリーシャ。
聞けばやはり二人はプラウドの姉夫婦であった。
二人は元冒険者でプラウドともう一人精霊魔術師の四人でパーティーを組んでいたらしい。
プラウドと精霊魔術師が引退して宿屋を始めたので解散し皆引退したのだという。
そこでイエレナがちょうど帰ってきたので、マリーに店番を任せてリーシャとイエレナ、プラウドとその姉夫婦は空いたテーブルに着いた。
昼食は休みにしたので食堂は誰もいない。
泊まり客だけ受け付けるようプラウドはマリーに伝えた。
「ねえ、そもそもマスターは今までどうやって不凋花の蜂蜜を手に入れてきたの?」
リーシャに上位精霊と契約出来かもしれないという言葉にすっかり忘れていた疑問を口にするイエレナ。
アマラントスはAランク相当の精霊スプリガン百体に護られた【防人の丘】にあるという。
「それは冒険者仲間の精霊魔術師が【精霊の愛し子】でスプリガンと交渉して手に入れてくれていたんだ」
プラウドの言う【精霊の愛し子】とは生まれつき精霊に愛されやすい魔力の質を持った者のことを指す。
エルフ族は元々そうした魔力の質を持っているので、態々【精霊の愛し子】と呼ぶのはエルフ以外の種族である。
聞けばその精霊魔術師はアリスティアという名の人族でプラウドの恋人であったらしい。
彼女は生まれつき魔力を貯めやすい性質で自分でその魔力を放出する事が出来ず幼い頃はよく体調を崩していたらしい。
そんなある日愛し子の魔力に魅せられた精霊と契約しその魔力を分け与えることで体調を維持出来るようになった。
しかし次第に内に貯まる魔力量と精霊に分け与える魔力量の差が大きくなり体調を崩す事が多くなった。
そんな時、アリスティアと契約していた精霊の一人が【防人の丘】に行く事を勧めた。
【防人の丘】にある古代遺跡から溢れる魔力で精霊界と繋がり掛けているという。
精霊界ならば貯めすぎて毒となった魔力を中和し、より純度の高い魔力で体の悪い所も癒せるだろう、と。
アリスティアに相談されたプラウドは他に恋人を治す方法が分からず藁にもすがる思いで【防人の丘】へ共に行く事にした。
しかしそれは二人の別離に繋がる事となるのだが、その時はまだお互い知るよしも無かった。




