「贄なるもの 二十一」
◆
渓谷の村の残党とは一悶着あった。
ダンテが進み出て交渉を始めたが、体の一部を緑に染めた病人たちは、
「なんだこの病は」
「呪いだとか」「呪いか」「穴二つか」
「賊に身を落とした挙句これか」「治るか?」「不可能だとよ」「治らんか」
「地獄だな」「嫌だよぅ」「渾沌人の分際じゃ冥府にも行けないってか」
「だから言ったんだ」「言うだけか」「畜生バロート人どもめ」「これは運命か」「世界の選択か」
など袋小路に追い詰められた鼠みたいな顔で相談している。
しまいには「呪いには呪いを」「一理あるな」「生贄をだそう」などと言い始めた。動物の特徴をもった渾沌人は、命を賭して他人を渾沌人に変えることができるため、完璧な報復手段を持っているのだ。
マイティは人の良い兄ちゃんみたいな声色で、「おいおい静まれ。お前たち、牢に捉えている人間がいるだろう。案内しろ」と一方的に言い放つ。
大上段からの言い分に納得できなかったのだろうか、一人の狼頭が進み出た。
「なんなんだい、アンタら!ナニサマ──うぐぅっ!」
声を荒げた狼頭は、マイティの拳を肺あたりにぶち込まれ、10レヌトほど吹っ飛んで物理的に沈黙した。狼頭たちは犬口をかっぴらいて唖然とする。
賊風情と言葉を交わすのも大儀そうなマイティに容赦は見受けられず、村の面々をダンテが必死で抑え、渓谷沿いの洞窟の一つに案内された。
「どうやら本当にボウズの言うとおりに捕まったやつがいるみたいだが……魔が出るか蛇が出るか」
洞窟を利用した、小規模な共同体によくある懲罰牢だ。
木の格子で阻まれているが、薄暗い気配は薄い。本物の犯罪者を閉じ込めるような場所ではない。
「どんなやつが閉じ込められている?」
「へぇ。旅人の一行でさ。しばらく働いてもらうかわりに、そのうち解放してやると約束しているんで」
この村の人間はしょせん賊なので悪びれた様子もない。
進み出て中へ呼びかけた。
「いるかー?」
「……何用でしょうか?」
眩しそうに顔を出したのは、理知的な面立ちをした青年だった。銀髪にカフェオレ色の若い肌。均整のとれたスラッと長身の体つきをしていて、異国の民族にみえた。
「健康そうだな。捕まってるんだよな?」
「……助けが来たということで、よろしいか?」
「うわっ本当にいたよ」
「面倒ごとばかり増えるな……オレたちは離れてる。ほらボウズ、お前の仕事だ」
一人で行けっていうのか?
おれは戸惑ってしまって見回す。
マイティもイドシオンも後退りし、ガレアーンなどそっぽを向いてしまって、焚き火をおこし鍋など沸かしている。声をかけても薄いケツで返事もしない、完全に他人ごとだ。
「ばっか……くーきよめ。神々絡みの問題になんてできるだけ関わりたくないの。下手を打たなくても呪われるからね。ジョーシキでしょ?」
それはそうだが、おれ一人で行くのか?心細い……色々あったけどチームじゃないか、情とかあるだろ……ないのか? よく考えたら情が湧く理由もなかったので、寒い心地になりつつ、まずは挨拶を交わした。
「こほん。自分はメテウスと申します。バロート戦士の方々の従者をしております」
両手を腹にあてて、東方式にすこしだけ頭を下げる。礼そのものが見慣れなくとも、暴力を暗にちらつかせて要求を通そうとする野蛮人ではないという合図は通じる。
佇まいで察していたが、やはりこの青年は文明的なやりとりに安心した顔をした。
「これはご丁寧に」
「子供の身なりで不安もおありでしょうが、見ての通りの年ではありませんので、遠慮される必要はありません」
「長命種の方ですか」
長命種呼ばわりにイラッとするが、前世があるとか言い出すとややこしいので頷いた。
「我々は任務の途中でこの村に立ち寄ったのですが、あなたがたを解放したいと考えております。捕まった経緯をお聞かせ願いたい」
「これはこれは……。私はベネディクト・マリノスと申す者。旅の道すがら薬師の商いをしていたのですが、奇病にかかったこの村の方々に、治療をしてほしいと捕まえられました」
女神から聞いていた名前と違う。家名を名乗らず、貴族的な礼もしない。素性を隠したいのだろう。
「それはそれは、不運でしたね」
「直接的な危害を加えられたわけではありませんので、捕らえられた恨みよりも、伝染病に対する同情のほうが大きい。安楽死ばかり施す、我が身の無力を嘆く毎日です」
膝をついて座り、目線を合わせ、ベネディクトと名乗った男は、真意に満ちた顔つきだ。
しかし、あまり信じられなかった。いかにも不運な旅人という型にぴったりハマっていて殊勝だ。薄い警戒心が先立つ。
他人の中にある類型にぴったりあてはまる言動をとる人間は、自分で自分をそういう類型だと思い込んでいるか、詐欺師が多い。類型の共通観念が人の頭の中にあるのを知っていて、それを人間の実像だと考える人間がいかに多いかを理解している。口から先に廻る人間がその場かぎりのデタラメを言う場合、小気味がよくて白黒のはっきりとした断言をよく行うが、それは誠意がないのではなく言葉を額面どおりのものだと考えていないからだ。
こいつは詐欺師なのか?そうではないのか?
無言で顔をジロジロと見ていると、ベネディクトはやりにくそうにした。
「メテウス殿?私たちを解放していただけるということでよろしいか?」
不安げな顔。
……邪神が言っていた、ロアという家名。
ロア家といえば、他国でも耳にするアペイロン王国の名家である。
複雑怪奇なアペイロンの貴族社会を回遊する、一大貴族の家の人間にしては人間味がありすぎる。たとえ傍系であっても教育を施されていないはずもなく、白々しい演技に感じてしまう。
だが、理知的な性は演技ではないだろう。猿や爬虫類みたいな顔つきの人間とは別の種類。こういった相手に、暴力を匂わせる言動をとれば永遠の反感を買ってしまうので、できるだけ丁寧に問うた。
「こんな戦争ばかりの土地で商いとは、本当のところ、何をしていたか、聞かせていただきたい」
「疑念ごもっとも。ですが、深い理由などありません。商いとは渇いた人間が海水を飲むようなものでして、金銭を稼げば稼ぐほどもっと稼ぎたいと考えてしまう。
ある種の中毒でしてね。欲望の深みにハマっていると自覚していても、本当に痛い目をみないうちは、人間はそれを改められないものですよ……。
私は流行病があると聞いて、稼ぎどころと見て薬師の格好で近づいたのですが、はは、間抜けにも捕まってしまったというわけです」
イチ行商人のふりをして解放されればよいと考えているのだろうか?
無言のまま時間が過ぎる。
だんだん笑顔が消えていくベネディクトを見つめ続ける。
ガキ相手と舐めてかかってこないところは、そこらの村人や兵士とは一線を画す。長命種を侮ってはいけないことを知っているのだろう。
「メテウス殿? なにか不審な点がおありでしょうか?聞いていただいてかまいませんが」
「護衛はどうされました?」
「地元の道を知っているという冒険家を雇っていたのですが、矢が飛んできた途端に逃げられました。命のための金を惜しむものではないと教訓になりましたね」
「……言葉を疑うようですが、そんな間抜けな旅人には見えませんね。率直に申し上げて、正直に言ったほうがお互いのためと思いますが」
「下働きが二人ばかりの行商生活です。財産も奪われました、あまりご期待に添えることはないでしょう」
賄賂を求めていると勘違いされた?
首を降る。
そうこうしてるうち、村人から鍵が渡され、牢を開けて中に入った。
薄暗いが陽光がなんとか届く通気口もあり、清潔で、水も食い物も置いてある。
便所が砂のかけられた壺で、やや不格好というくらいか。
子供の従者が一人と、狐耳をした渾沌人の中年従者が一人。
一つだけある寝台には狼頭の子供が寝ている。
ベネディクトを奥へ手招きした。
傭兵のころの交渉事を思い出す。
情に訴えかけるバカに、嘘つきに、いきなり激発したり泣いたりする人種に比べれば、言葉が通じるというだけで安心するものがある。脅しつけたり感情的になれば優位に立てると考える、百姓の世界観で生きている人間ではないのだ。ゆえに警戒しなければならない。会話の糸口を探した。
「この寝ている子は?」
ベネディクトは柔らかな笑みを浮かべた。ストレスを感じていても顔には出していない、内心が推し量れない相手との交渉は恐ろしいものだ。
「この村の子どもで、名をヒノメといいます。世話につけられていた子供ですが、脱出するために扉を開けてもらったことがあるので、まとめて閉じ込められてしまいました。
悪いことをしましたが、病の流行る村よりはこちらに閉じ込められているほうがよいということで、ともに生活しております」
「無事な子供を隔離してる、ということで?」
「端的に言えば」
「そっちの渾沌人のオッサンは従者だってわかりますが……」
獣じみた習性を持つ渾沌人は差別されるが、善良なやつはとことん善良で、主を売ったりするほど世間擦れしないので、貴人の連れる従者として一般的だ。あらゆる利害の外にいるため買収されづらいうえ、名前を変えて社会を回遊できる人間と違い、身体的特徴で個人が特定されやすい。つぶしの効かない人間であるからこそ重宝するということはある。
もう一人、少年がいる。
「こちらの子は?」
「親族の子です。見聞を広めるため、このような旅に付き合わせてしまって、親に合わせる顔がありませんよ」
「うーん……」
紫がかった黒髪に、青白い肌。情動のない目は子供らしくない。貴族なら様々な血が入っているので外見が似ていないというのはありえない話しではないし、親族というのは真実かもしれない。
ベネディクトは自分がなにを疑われているのかわかっていない。
だから中身のない会話になる。あまり不安にさせても交渉に支障をきたす。戦闘力を持つやつもいないようだし、白々しい愛想笑いを見るのもいい加減面倒になってきたため、種明かしを行う。
「ベネディクトさん。私たちは見てのとおり、バロートの人間です。外の人間よりも嘘偽りを嫌う。正直に話してほしいのですが」
おれは根っからのバロート人ではないが、風評を利用することに躊躇はない。
「これ以上、なにを言えばよろしいでしょうか? 生まれ育ちを?私は四男坊でして、家を出ましたが、アペイロン王国のディムッド子爵家に籍がまだ残っております。身分証をさらっていただいてかまいません」
「……騙すような形になって申し訳ありません。見当がついているんです。あなた、ロア家の人間でしょう?貴公子が薬の行商とは、通る話ではありませんよね」
笑顔にヒビが一瞬入ったが、一瞬で立ち直った。
素直に感心する、社交に慣れているし、頭がよいのだろう。
誤魔化すことを諦めたベネディクトは、表情は同じだが、はっきりと冷たい笑みを浮かべた。
「ベネディクトさん。騙すような形になったことは謝罪いたします。事情があってのこと、直接言葉を交わすまで確信を持てていませんでした。ご理解いただきたい」
「では、素性を偽ったとは謝罪いたしませんよ。当然の旅の知恵とご理解いただけるでしょうね。しかし、メテウス殿のお姿で先入観を持っていたのかもしれません、そちらもお人が悪い」
「もちろん、従者の方々を含めて身の安全は保証いたします、目的を話していただけませんか?」
ベネディクトの受け答えには一切のタイムラグがない。
頭の回転では全く敵わない気配がするので、できるだけペースを保つようにする。暴力を伴わない交渉事は、必要に迫られてこなせるようになっただけで、得意でもなければ勘所を掴んでいるわけでもないのだ。
あまり話し合いで物事を動かすことに慣れていない。ナイフを金玉に押し付けられた相手との話し合いのほうが絶対に簡単だという強い確信がある
「まず、どこで私の素性に気づかれたのか、お教えいただけないでしょうか?私の出自を知っている方がおられるとは想定外でして、動揺しております」
情報をどこで握られたのか不安なのだろう。暗殺すら警戒しているはずだ。安心させてやりたいが、信じてもらえるかどうかはわからない。
「お話します。
滑稽無糖に聞こえるかもしれませんが……神命といえばいいんですかね?
あなたが此処にいると不都合がある、そう神託がくだったんです。私が思うよりも貴方は大物なんでしょう。偉大なる神々のお言葉どおり、というわけです」
実在する神について話す時、茶化してみせるのは人の無力を感じさせるからだ。
胸元を引っ張って、鎖骨あたりに刻まれた神象を見せる。
ベネディクトの笑顔が固まった。
瞳孔が広がる。動揺?恐怖?興奮しているのか?
「……真実ならば。極めて興味深い。
著名な神々の神象はすべて記憶しているつもりですが、覚えのない神象です。質問してもよろしいでしょうか?私について、どう伝えられました?」
態度がさらに慎重になり、表情は笑顔のままだが、緊張が嗅ぎ取れるほど高まっている。
神々がらみで警戒心を針立たせない人間は単なるバカなので、これは正常なことだ。
知っていることを素直に言う。誠実な姿勢をみせるべきと考える。
嘘も方便という言葉があるとしても、重要ごとで嘘をついたあとの不信感は歳月でも消えることのないスティグマと化すため、交渉で嘘をついたりはぐらかしたりする人間は十年と経たずに殺されると相場が決まっている。
「ロア家のベネディクトを──なんだっけな?助けろ?このあたりから連れ去ってやってくれ?と言われています。空中都市の研究をしているみたいだから、その関係じゃないですか?」
肝心の命令が、うろ覚えだった。
おれのアホっぽいふんわり言葉に、ベネディクトはやけにオーバーな反応を示している。後退りし、目を固く瞑っている
「──それが事実ならば、貴方はよほどの寵愛を受けている。使徒。いや、聖庭会に亜神として認定されてもおかしくない。
私は、空中都市の再現研究を他者に漏らしたことはないのですから。
神々は大まかな戦争や歴史を言い当てることもできても、個々の人間を区別することは稀、ましてや一個人の未来など気にされることはめったにありません。例外は契約。私の居場所が問題になったというより──メテウスさんの契約に関係しているのでは?」
……めちゃくちゃ怖い。
おれの契約。身に覚えはないはずだが、ベネディクトが言っていることが的外れとは断じることができない。
あの邪神はなんのためにおれに指令を与えた?
言葉通りに受け取っていいのか?
表面的な意味を信じていいのか?
怪しい。
目的はなんなんだ?
──不滅を狩るのだ。
一度死んだときは恐怖を奪われたらしい。
なら二度目は?
あの神域から逃げ出すときに、なにを取り落としたんだ?
この不安は何だ?
混乱を抑えようとしていると、邪神の言葉を思い出した。
会話を繋ぐために伝えることにした。
「そういえば、ベネディクトさんに、”こう伝えろ”と指示を受けました。
『前提が間違っている、落下と上昇の違いは存在しない』
意味がわかりますか?暗号かなにかでしょうか?」
「──────落下と上昇の違いが、存在、しない?」
意味不明だからどうでもいいことだと思っていたが、ベネディクトは急に思考の中に沈殿した。
眼の前で手を降っても無視されたので、一度場の空気を入れ替えるため、牢屋の外に出ることにする。
「ふぅ……」
「少年、どういう意味なの、あいつとの話?」
身繕いをしているイドシオンが、髪先をチョキチョキ切りながら言う。盗み聞きをされていたのだろう。
「……おれもよくわからないんです……あんまり深く考えても意味なさそうなんで、もう流されるしかないかなって」
「マジか……マジっぽいね……少年、悩みとかなさそうなタイプなのに珍しく悩んでるし……」
それはどういう意味だ?悩みがなさそうなタイプって……完全に悪口じゃないか?おれは反論されないと思いこんでいるふんわり悪口に普通に言い返して場の空気を悪くする人間だぞ?他人が誹謗中傷されて自殺しようがまったく心は傷まないが、自分への誹謗中傷には正義の反撃みたいなノリになって号泣するぞ?
すこし睨むと、イドシオンが親指で後ろをくいっと指す。
そこには……。
片腕の指一本で腕立て伏せをしているマイティが、汗を滴らせながらキラッと笑みを見せた。
「少年、悩んでいるのか?
悩むな!
考えたところででわからんことはわからんのだから!
悩んでどうにかなるようなことは、しょせん悩んだくらいでどうにかなるような、どうでもよいことなのだ!
はじめからその時間を使って筋肉を鍛えたほうが効率的といえるだろう!
ごちゃごちゃ言っていたが、あの男は名家の人間なのだろう?
とりあえずブウェイック家に預けて、それで終わり!任務完了だ!」
ちょっと悩んでしまっていた俺はうっかり感動した。
「な、なんて単純明快なんだ……!そうか、悩むより筋肉を鍛える方が意味があるのか……!」
「脳筋が二匹に増えた……」
あとやっぱり盗聴されていた。
乳白色の外套に腕を通さず肩むすびにして、真剣そうに鍋を覗き込んでいるガレアーンに近づくと、ん、と椀を渡されたので啜る。塩と肉と葉っぱが煮込まれた、可もなく不可もない補給食だ。大量の肉をぶちこんでメイン栄養を稼ぎ、細々としたサブ栄養は葉っぱでなんとかしようという原始的な設計思想である。
「香辛料とかないんですか?」
「いやなら食べるな」
「嫌とは言ってませんが……骨で出汁くらいとれば」
「いやなら食うな!」
「いえ。忌憚無き意見、正直な感想をですね……それがシェフへの誠意っていうか……」
「じゃあ食べるな!」
「わかりました黙って食べます」
うまいうまいと言ってみせるのもどうかと思ったので、栄養補給に徹した。
二杯目を掬うと、ジト目をしたガレアーンが「おまえ、口調代わりすぎじゃなかった?あっちが本性?」と問いかけられた。的はずれな質問だ。あとやっぱり全員に盗聴されていた。
「聞いていたんですか?」
「耳を強化したくらいで聞かれるほうが悪いでしょ。敬語が話せたとか知らないんだけど?騙してた?」
「いや……交渉事でフランクに話すわけないでしょう?常識じゃないですか?」
「……おかしいって、わからない?
なんで私にタメ口叩いておいて、あの男には敬語なのって聞いてるんだけど?あげく料理に文句をつけてくる、意味わかんなくない?」
心底意味がわからないとばかりに、下から睨めつけるようなガンを飛ばされた。
おれは真面目な顔で頷く。
「それは前提条件の違いですね」
「ぜ、前提条件……?」
やはり小難しい交渉などより脊髄で話すほうが早い。
「ガレアーン様は、己をハヴォック家の貴人だと考えていらっしゃる」
「考えてる、ってなに?事実そうなんだけど?」
「一方、おれはなんか戦のドサクサでいきなり手下にされたと考えている。だから2つの印象が食い違っている。それが原因……」
「原因不明のままじゃない?」
「ぶっちゃけ、そこらの山賊の頭領の娘くらいの感覚が消えてませんね」
「おまえ本当は私を馬鹿にしてからかってるんじゃないの?」
蹴られそうになったのを腕で受け、代わりにスネを蹴りかえしたが、飛び上がって避けられた。
そのすきに椀を置き、ダッシュで洞窟に戻る。
ガレアーンの性格的に、二撃目や不意打ちはないので安心している。
そのうちマジギレされて殺されそうな気はするが、本当はもう破滅しようが死のうが大したことではないのだ。本当に殺されそうになったら全力で逃亡するだけなので、どのみち逃げるんだから気を使うのも馬鹿らしいという、負の楽観が作用していた。




