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不滅を狩るる ~ 終末の傭兵に二度目があったなら?→闇堕ちJK!→メクルメクク!~  作者: 六津井パラピポチ


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20「決戦兵器! 二」



 草原は清冽な風に揺れていた。

 日が頭上に昇る時刻。鬨の声が両軍からこだましている。

 秋の湿度のない日差しが木漏れ日を落とし、大樹の元で遠目に観戦するメテウスたちを斑にちらつかせた。


「あれ……味方はどれくらいいるんだ?」

 すっかり他人事気分のメテウスに、ガレアーンが手でひさしをつくって生真面目に数える。


「……三万人くらいじゃない? 敵のほうがだいぶ多いみたいね」

「レナツァイトの連中にとっちゃ防衛戦争だからナァ。集めた雑兵はぶつかりあいが使いどころとみたんじゃないかァ?」

「へぇー……」


 角笛の音が青空に響く。

 両軍は歩みだした。遠目には緩慢にみえる。

 周囲には戦争見物の農民がちらほら出没していて、のどかな昼下がりの心地だ。


「あ、左右が動いた」

 逆にいうと中央だけは頑なに方陣を堅守していた。これが統制の取れていない徴集兵ばかりの軍ともなると、牧羊犬に追われた羊のように進むたび形を捻じ曲げるもの。双方の右翼左翼にはそういう方陣がいくつかある。


『ォオオオオオッ──』

『ォッオッオッオォッ──』


 かすかな低音が腹に響く距離なのに、砂ぼこりが舞っている錯覚を覚えた。二つの勢力が生死を賭けてぶつかりあう会戦はとにかく迫力が違っている。一方、周囲には弁当売りに水売りの百姓がぽつぽつと出没しているのであまり緊張感はない。


「あっ――あれ!おれの部隊の旗だ……」


 メテウスの属する部隊の旗がキラリと見えた。

 あれでもエーテル使いの集められた部隊の一つであり、方陣を組んでいる兵とは扱いが別だ。

 横長に布陣する陣形を区切って包囲するように、猟犬役の精兵がコマ送りの速さで展開していく。エーテルを満足に扱える精兵は下手に固まれば行動を制限されるため、小部隊の塊をつくって散兵や予備兵の動きをするのがセオリーである。


「……疑問なんだが、敵はなんで本拠地から離れて布陣してるんだ? 城塞の有利を捨てる意味がわからん」


 物見遊山丸出しのメテウスの疑問に、ヘジケーは戦が楽しいのか、頬を歪めた。


「野戦で勝つ算段があるんだろうサァ。数で勝ってるんだ、きっつい籠城をやるほど不利じゃあない。籠城してりゃ冬将軍がくるんだろうが、それでもできれば冬前に戦を終えたいのはどっちも同じだ」

「フーン……」


 なだらかな丘から平野に整列して進軍するブウェイック家軍勢。中心に歴戦の戦士団を起き、方陣の間をエーテル使いや龍馬に乗った戦士が巡回する。翼の先端に近づくにつれ練度が悪くなっている、中央突破の構えだ。


 一方、レナツァイト家の軍勢。騎兵隊と騎乗魔獣の数が並みではなくブウェイック家の倍はいて、方陣ごとの隙間を埋めている。

 戦士に挟まれた形の徴集兵たちは、兜の有無も装備も不揃いで、職業兵士には見えず、村落から徴兵された弱兵とみられる。ただし数だけは多く、侵略されているとあって士気は低くない。総じて数は五万近くいるだろうか。


「敵のほうが強そうじゃない? 数が違いすぎる。負けるんじゃないか?」

「おまえ、ほんと失礼よね! 戦っている戦士たちに申し訳ないと思わないのか!? こら!」


 メテウスは怒鳴りつけられて耳を覆い、石の裏に隠れているナメクジみたいな表情で答えた。


「全然……むしろ全員死んじったところでなんの問題があるのか聞きたいですが」

「こ、こいつ、開き直って……! ほんとに人間?」

「どういう意味ですか?」


 ガレアーンは珍しく眉をへんにょりさせて戸惑っている。

 メテウスの味方びいきもへったくれもない言葉に、ヘジケーは快活に笑った。


 ──戦人とはそういうものだ。流ちょうに恭しい言葉を操り、配慮と良識ある戦士など反吐がでる。そういう政治屋じみた輩は、殺し合いでは簡単に裏切る。その点このクソガキときたら、政治屋どころか、人間味すら怪しいモンだ。もう、年をごまかしている長命種の可能性はかなり高い……。


「坊主、負けるか不安になるのは、テメェがものを知らねえからだ。恐れ多くもブウェイック家のロワットラ様が大将を勤めておられるんだゾォ?」

「……ってもよ、去年の春の戦じゃ、鳴物入りで前線に来たブウェイック家のナントカ様がよぉ、すぐ死んじまった上に負けた記憶があるんだが……」


 ヘジケーは「そういや常識も学もへったくれもない孤狼児ガルーか」と、嘆息し、言い含めるように呟く。


「なんといってもロワットラ様だ。血族の中でも有名どころで、不安はない。

 おまえが会ったようなお方は、血が近いだけで本物のブウェイック家とはいえんのだ。前線に出るブウェイック家の子供はいくらでも死ぬからなァ。血族から戦えそうな子を養子にとり、小競り合いに何度も送り込んで生き残るようなら、ようやく本家の人間として迎えられる──そういう伝統だ」


「……えぇ……そんなんアリか?」


 ぷんぷんしながら隣に座ったガレアーンはさも当然とばかりに頷く。


「血族のほとんどを戦で失う、貴族としてあたりまえのことだわ。血を流さない貴族は戦士を統率できない。血筋だけで選ばれた人間が当主を受け継ぐ貴族は滅んでいくものだし……」

「末法すぎる……」


 おれの知ってる貴族と違う……情けない。これがほんとうにお貴族様の姿か……?

 

 血族牧場から優秀な闘牛を引っ張ってくるシステムで運営されていると知ったメテウスはカルチャーショックを受けたが、よく考えたらこいつら辺境の蛮族だったと思いなおした。

 一つの家という観念が薄く、血族というくくりで最強の戦士がのし上がって当主になるのだろう。ほぼ未開の部族が酋長を決めるノリだしお家争いも頻発しそうだが、話を聞く限り、戦死が多すぎてお家争いを勝ち上がってもすぐ直系が途絶えるから意味がないのだろう。貧乏くじみたいになってる可能性すらある。無常だった。



「戦も始まったんだ。そろそろ出発するぞォ」



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