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第3話 論功行賞の明暗

「ノーボディー!!」


「英雄様だ!!」


「魔王を封じた男だぞ!!」


酒が飛ぶ。


肉が焼ける。


歌が始まる。


太鼓が鳴る。


空は青かった。


戦いが終わった空だ。


「……すごいな」


ノーボディーが呟く。


「当然よ」


剣士レイが笑う。


「あなたが勝ったんだから」


子供が走ってくる。


「英雄様!!」


手を握られる。


小さい手だ。


震えている。


「怖かったんだな」


ノーボディーが言う。


「もう大丈夫だ」


子供が泣き出す。


周囲の大人たちも泣いている。


「戦争が終わったんだ!!」


誰かが叫ぶ。


「魔物の時代は終わりだ!!」


酒が配られる。


肉汁が滴る。


焼きたての匂い。


腹が鳴る。


「食べなさい」


レイが皿を押しつける。


「……いいのか?」


「あなたのものよ」


肉をかじる。


脂が広がる。


熱い。


旨い。


「こんなの初めてだろ?」


「……ああ」


レイが少しだけ照れる。


「これからは毎日よ」


民衆がざわめく。


道が開く。


白いマントの老人が進み出る。


「英雄ノーボディー」


杖をつく音。


重い。


「この地はあなたのものだ」


ざわめきが大きくなる。


「領主として受け取ってほしい」


「俺が?」


「あなたしかいない」


老人が続ける。


「そして」


レイの背中を押す。


「この剣士レイも」


空気が止まる。


レイの顔が赤い。


「……え?」


「戦場で心を結んだのだろう」


民衆が笑う。


口笛。


歓声。


「結婚しろ!!」


「英雄の花嫁だ!!」


ノーボディーが固まる。


「俺でいいのか?」


レイが睨む。


「あなたじゃなきゃ嫌よ」


静かに言う。


「私は一生誰とも結婚しない」


太鼓が鳴る。


歓声が爆発する。


酒が頭から降ってくる。


誰かが抱きつく。


世界が明るい。


――同じ頃。


「跪け」


冷たい声。


国王アンガーが言う。


玉座の間は暗い。


窓は閉じられている。


勇者ジャスティが運ばれてくる。


担架。


布の下から黒い臭いがする。


「これが勇者か?」


国王が鼻を鳴らす。


「生きているのか」


聖女ペイシェンが答える。


「……はい」


声が震える。


「ですが呪いが」


「言い訳は聞かぬ」


玉座の杖が床を叩く。


ドン。


「魔王討伐は王国の悲願だった」


ドン。


「貴様らはそれを失敗した」


聖騎士ピューリが歯を食いしばる。


「……申し開きは」


「黙れ」


国王が睨む。


「責任は取ってもらう」


兵士が勇者を引きずる。


「待ってください!!」


ペイシェンが叫ぶ。


「地下だ」


国王が言う。


「死ぬなよ」


笑う。


「まだ利用価値がある」


担架が闇に消える。


ジャスティがうめく。


「ころ……せ……」


ペイシェンの膝が崩れる。


「聖女ペイシェン」


国王が呼ぶ。


「貴様は看護だ」


「……はい」


「死ぬまで治せ」


空気が凍る。


「できません」


思わず言ってしまう。


「呪いが」


「なら祈れ」


国王が笑う。


「聖女なのだろう?」


兵士たちが笑う。


「賢者デリィジェ」


呼ばれる。


デリィジェが前に出る。


足が震えている。


「軍師の資格を剥奪する」


言葉が刺さる。


「研究機関への出入りも禁止だ」


「な……」


声が出ない。


「一般魔道士として登録し直せ」


「私は……」


「大賢者ではないのか?」


玉座が嘲笑う。


周囲も笑う。


ピューリの拳が震える。


「聖騎士ピューリ」


国王が言う。


「最前線だ」


「……は?」


「勇者の代わりだ」


ざわめき。


「魔王はいなくなった」


国王が続ける。


「だが戦争は終わらん」


地図が広げられる。


赤い印が増えている。


「人間同士の戦だ」


静寂。


「誇りある死をくれてやる」


兵士が三人を囲む。


ペイシェンが立てない。


足が動かない。


遠くでジャスティが叫んでいる。


「ペイ……シェン……」


呼ばれる。


でも助けに行けない。


ノーボディーの名が頭をよぎる。


あの作戦。


あの顔。


「役立たず」


自分が言った言葉が蘇る。


胃がねじれる。


吐きそうになる。


地下へ続く扉が閉まる。


闇の中で勇者の絶叫が響き続けていた。



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