その時は突然やって来ました。ある春の日の昼下がりでした。~それでも私は生きていきますし幸せになってみせます~
ある春の日の昼下がり、婚約者ルルードが知らない女性を連れて私の前に現れた。
「よっ」
ルルードは何事もなかったかのように軽い挨拶をしてくる。
しかしその様は明らかに不自然だ。
婚約者がいる彼が隣に他の女性を置いているという状況そのものが明らかにおかしい。
「ルルードさん、そちらの女性は?」
「ああ、彼女はリリア。可愛いだろう。実はそのことで話があるんだ」
「お話が?」
「そうそう」
少し間があって。
「お前との婚約、破棄とすることにしたから」
彼ははっきりとそう言った。
ルルードの隣にいるリリアは甘ったるい顔立ちの女性だが、その面に滲んでいる笑みは少々黒ずんでいる。ルルードは気づいていないのだろう。けれども私から見れば明らかだ。リリアの笑みは純粋かつ純真なものではない。その表情と目つきを見ればすぐに分かる、彼女が綺麗な心の持ち主でないということが。
「俺はリリアと結婚することにした」
「本気で……?」
「ああ、もちろん。本気だ。それ以外に何があるというんだ。……ま、なんでもいいか。そういうことだから、お前とはおしまいだ」
ルルードとリリアはその関係性を私に自慢するかのように熱く見つめ合っている。
「じゃあな、さよなら」
彼はあっさりと私たちの関係を叩き壊し捨てた。
◆
数ヶ月後、ルルードはこの世を去った。
やはりリリアは悪人だったようだ。
はじめから騙すつもりで彼に近づいていたようだった。
婚約してからリリアは上手く言ってルルードから資産を引き出し、それが手に入るや否や去っていったそう。
まさかの裏切りに酷くショックを受けたルルードは自ら死を選んだそうだ。
ただ、悪女リリアもまた、幸せにはなれないままその生を終えた。
詐欺的行為を繰り返していた彼女はある時危ない男を騙してしまったらしく。騙せていると思っていたら乗せられていて。痛い反撃を食らうこととなってしまったそうで。
リリアはその危ない男の手で始末されたのだそうだ。
死の間際彼女は「あたしは悪くないの! 騙されただけ! 騙されて、協力されていただけなの!」とか「どうして! こんなのおかしい。あたしはただ好きなように生きてきただけ! 騙してなんてない! 悪いことなんてしてない!」とか騒いでいたそうだが、結局許されることはなく、そのまま落命させられることとなったようである。
……ま、彼女の場合どうなったとしても自業自得だろう。
◆
「おっはよ~」
「おはよう」
あれから数年、私は穏やかな家庭を築くことができた。
「朝早いなぁ~」
「そうかしら」
「ぼく、もう、めっちゃくっちゃ眠くてさ~」
「いつもそうね」
「目覚めのキスとかしてくれない?」
「それは断るわ」
「うわわわぁ~。厳しいなぁ~。悲しいよ~」
「目覚めの紅茶なら淹れるわよ」
夫となってくれた彼は少し個性派な男性だけれど、そういうところも含めて彼のことが好き。
「よっし! よっしよっしよっしゃっしゃしゃっしゃん! よっし! よっしよっしよしよしよっしよっしゃああああああああああああ! 嬉しいぃぃぃぃぃ! 嬉しすぎぃぃぃぃぃ! そりゃ嬉しすぎるよぉぉぉぉぉぉぉ! わっしょいわっしょい」
◆終わり◆




