婚約者が珍しくわざわざ私の家までやって来たので何かなと思っていたのですが……?
「フローラ! 話がある! 聞け!」
その日、婚約者である彼ロバーツは、突然やって来た。
わざわざ私の家までやって来るなんて珍しいこと。
なので驚くと同時に戸惑った。
それでも失礼な態度は取れないので一応真面目に対応しておく。
「はい、何でしょうか」
「重要な話だ」
「……重要な話、ですか」
「ああ! 聞けるか? 今から言うからな!」
「分かりました」
暫し沈黙があり、その先で。
「お前との婚約は破棄とすることにした!」
彼ははっきりとそう言った。
「フローラ、お前、尽くす心があまりないだろう? だからお前は価値がない! お前は低価値な女だ! 俺の婚約者でありながら俺に尽くさない、そんな女に価値があると思うか? 答えはノーだ!」
しかもそんなことを付け加えてくる。
「あまり構うな、と、仰っていたではないですか」
「言っていない!」
「ええっ……どうして嘘をつくのですか。そんなのは困ります。私は確かに聞きました。『婚約しても最低限の関わり方にしろ、あまり構うな』と仰っていたではないですか」
「嘘つきはお前だ!」
「……なぜ、そんなことを」
「お前はさらに価値が下がった。俺に口ごたえする女なんざ地獄へ堕ちるべきだ。フローラ、お前は、今すぐ消えなくてはならないレベルの罪を犯した」
多分これはもう会話にならないな、と、密かに思った。
「では! お前は消えろ! ……さらばだ!」
ロバーツはそう吐き捨てて去っていった。
……いや、もう、本当に……意味が分からない、意味不明過ぎる。
◆
婚約破棄された日から一週間。
事件が起きた。
強風で折れた樹木がロバーツが住んでいる家に刺さり、それがたまたまロバーツの部屋に直撃という状態で、それによってロバーツは命を落とした。
ロバーツは自室で眠っていただけなのに落命することとなったのだった。
身勝手極まりない生き方をしてきた彼にはしっかりと天罰が下ったようだ。
◆終わり◆




