483話 空と君のあいだに
9月20日、金曜日。家なき子の飛翔は、ある場所に向かっていた。そこはこの世界で初めての学食が生まれた地である。
「飛翔、約束通りに来てくれてありがとう。最近、調子はどう?家が無くなったって聞いて…」
「あぁ、僕は大丈夫だよ。それより…ここが噂の…」
「お待たせ。さて、君たちに合わせたい人がいるの…」
そうして、望愛が連れてきたのは、豊嶋大学の初代学食サークルの人たちだ。
「知っての通り、私はサークルの初代副会長で、料理長の南川望愛…この子達の師匠だわ」
「初代会長の八奈見誠二。以後お見知り置きを」
「そして、初代会員の1人、島袋未奈と申します。そうだ望愛、私も最近弟子を入れましてね」
「…こほん。私たちは、4人目の弟子を探しているのです」
「…どういうことだ?」
「はい、僕には本来…4人目のお弟子さんがいるはずで…」
「それで探しているのですが…」
「千織と恵未は…最後に見た場所を覚えているのですか?」
「あの子は顔を出さないので…」
「最後に見たのは由依が弟子入りする時です!」
「そう…それじゃあ私たちは知らないですね…」
「たちってなんだ!ところで、飛翔くんは素晴らしい料理を作った…というのを知っているんだ」
「どうして…ですか?」
「去年のコンテストのエキシビションでカレー作ってただろ。あれを食べてね…負けたぁ…って思っちゃったんだ」
「あれは本当にチームワークで…」
「そのチームワークって概念は学食サークルの歴史の中でも結構大きな進歩なんだよ…」
昔の学食サークルの伝統は、今とは少し違う。阿吽の呼吸を意識するためのストーカー行為が横行したり、品質の意識よりも目の前の敵を倒すような考えがあったりするなど、今よりもドロドロで望ましくない関係が続いていた。
「元々学食って学生に食を通じた学習をするために作られた。その点は給食も結構似てるんだが、職員にやらせるのは食育なのか?そう考えていたら、いつのまにか自分たちが学食を作っていた…それがまさか、今はこんなに成長して…」
「誠二の想いはよくわかる…だから、創始者の私たちが弟子を勧誘して、私たちが育てたんだ。その結果…学食代行ビジネスや学食コンテスト、学食のサブスクなども始まってね…」
「…ところで、4人目のお弟子さんは誰でしょうか?」
「…もう答えてもいいんじゃない?」
「実は…4人目は今…冬岡学院の方で…」
「ごめんね、先に言っておくべきだったわね…」
「冬岡学院…杏奈さんの所ですよね?」
「そうなの…そうなんだけど…」
「…だから飛翔くんはすごいのよ。飛翔は私が育てた!」
「由依、それは嘘でしょ…」
「でも、学長を知っているなら話は早い!彼女のところの学食サークルの…」
「いや、副学長が4人目…冬岡学院にもいつかは…」




