479話 喧嘩日和
9月11日水曜日、夏の残りがわずかに空に広がる頃…
「なんでここにいるんだ…」
飛翔は、謎の場所に到着した。
「いや、謎じゃないですよ」
「真音が呼び出したんだから…私たち、学食サークルを」
…学食の机には、何やら揉めている雰囲気。どういうことなのだろうか。
「お腹すいた〜」
「どうしたんだよ!」
「コーン茶の部屋…停電したの…」
「あぁ…えぇ!?」
「待って…京子さんじゃないですか!?お姉さんはお元気ですか?」
京子には姉がいる。海未という…まぁ素晴らしい栄養士だ。
「えぇ、今もきらら大学で栄養士を勤めてる…と思うのですが、あの大学の学食サークルはどうしてこうも曲者揃いなのでしょうか…」
「監修が悠一さん、栄養士が海未さん…間違いないはずです…」
「…ところで、どうして揉めているのですか?」
「たしかに、なんだか雰囲気が険悪だよ?」
「萌香と愛梨がケンカした…雪さんと京子さんは初めましてだよね。遅れたけど私は案内役の唐土冬華。気軽にコーン茶って呼んで」
「それで、ケンカした理由って何?」
ケンカした理由は、味の方向性の違いだ。愛梨が目指してたのはボロネーゼにも近い濃厚でお肉の旨味が詰まったような味わい。一方智花はトマトを効かせた酸味の強い軽めの味わいを目指していた。
「まずさ、予算考えてみようか。愛梨はソースの味付け、どう考えてるの?」
「もちろん赤ワインとトマト缶、それと…ブイヨンです。でも奥深さが出ないのでデミグラスソースをちょっとだけ入れようか考えております」
「…萌香はどうなの?」
「私はホールトマトをベースにして、ケチャップやウスターソースを隠し味に、あとは野菜の美味しさを活かそうかと…」
「なるほどね…」
「飛翔が解決策を言いたそうにしてるところ悪いんだけどさ、愛梨のそれは違うんじゃないかな?」
「てっぺい先生…!」
「愛梨が作りたいものってミートソースなんだよね?デミグラスソースを使うのは違うんじゃないかな?」
「…確かにそうですね!」
「でも、萌香は隠し味が少し多すぎると思うんだ…そうだ。まずは野菜を炒めて香りを出す。智花、その野菜の中にニンニクやセロリって入れることはできるかい?」
「あ、はい!」
「そのあと牛ひき肉で風味を出し、そのあとはトマト。隠し味はケチャップと赤ワインを少し。これでどうかな?」
哲平の意見を参考に、改良したミートソースは、前のミートソースよりも奥深く、爽やかで重みのある味となった。
「本日はすみません。本日は部長と料理人の喧嘩に付き合わせてしまって…」
「真雪ちゃん、謝罪はいらない。次こうなった時は哲平くんを呼べばどうにかなる。飛翔よりは役立つから」
飛翔の名前を聞いた時、真雪は驚いた顔でこう尋ねた。
「飛翔さん…それって南川先生の…」




