475話 secret
「もうすぐで10年後の8月か…」
「そういえば最後に5人で会ったのっていつだっけ?」
「中学の卒業生だね。宮子か私が行けなかったり、飛翔が行けなかったり…」
「その時に10年後の8月って言ったんだね…でも…」
日付は8月31日、満点に広がる星空の下で車を走らせる4人。思い出話が盛り上がるなか、ラジオではリクエスト曲が流れていた。誰かは知らない人のリクエストだったが…
「この曲って…」
「小春がよく口ずさんでいた曲だね。これも…運命なのかな…」
「さぁね…」
感傷に浸りながら車は病院の前で停まった。時刻は1時。
「本当に来るとは思わなかったよ…さぁ、始めましょうか」
佳澄の言う通り、目が覚めるまで待つことになった。その中で飛翔はあれからどうなったかを聞いていた。
「正直記憶は5割しか戻ってない。あなたたちの事は思い出せた…しかし、自分の名前もどこにいるかもわかってない。なぜここにいるのかさえも…」
「私たちが…明日1日かけて取り戻して見せる!」
朝7時、目が覚める。彼女は久々の顔を見かけてはにかむ。
「飛翔くん…久しぶり…みんなも…元気だった?」
「元気だったよ。今日は10年後の8月…だよ」
「約束してたんだよね!」
「約束…分からない…」
「そうだよね…」
「でも…私が死んだのは…辛かったから…生きるのが辛い…ごめん…弱い私で…」
「違う…小春は…」
「許さない!」
「…しーちゃん?」
「あんたは弱い…弱すぎる!…どうして私に相談してくれなかったの…」
「…ごめんね…迷惑かけたくなかったの…」
「…迷惑だなんて…これっぽっちも思わない…ひーくんもゆきぽんもみーちゃんも…あんたのためなら…きっと力になってくれたんだよ…」
「辛かった時はお互い様…って、利恵ちゃんも言ってたでしょ!」
「…もしかして宮村先生…?…そっか、ここって転生したあとの世界ってこと…やっと理解した」
12時のチャイムとお昼ご飯、食べ終わると話は続いていく。椎奈は小春の記憶を紡ぎ出していく。まるで、鶴が絹を織るように繊細に。
「…ってことがあったのよ。あの時は楽しかったなぁ…」
「しーちゃん!それ言うなって」
「でも、楽しかったでしょ」
こんな時間が過ぎていった。そして、病院の時計が14時を指すころ小春は突然泣き出した。悲しかったのか嬉しかったのか、それはわからなかった。
「小春…記憶を思い出せたんだね…」
「うん…宮子ちゃん、素直になれなくてごめんね。椎奈ちゃん、最後まで話を聞いてくれてありがとう。雪ちゃん、またお弁当作ろうね、そして飛翔くん…ずっとずっと、大好きだよ」
春の幻影は姿を消し、そこにいたのは昔の彼女だった。
「…おかえりなさい。こはるん」
「小春ちゃんでいいよ〜」




