474話 夕暮れ時は寂しそう
8月30日金曜日、明日のための準備をする。
「しーちゃん…寂しそうにしてる」
「そりゃそうでしょ…しーちゃんは飛翔と小春を繋げたんだから…」
「そうね。椎奈は小春の事を一番気にかけていたから…」
雪は少しだけ不思議そうにしていたが、それは椎奈がすでに立ち直った後だったと感じてたからだ。しかし、実際は小春が亡くなったことを一番後悔していたのは椎奈だった。亡くなる前日も仲良く話していたからだ。
「私がもう少し話に乗っていたら…きっと…あの子は…」
「しーちゃん…もう自分を責めないで…」
「ひーくんも…隠さなくていいんだよ…」
その言葉を聞いて、飛翔は本音を言った。悲しかったこと、辛かったこと、自分を責め続けたこと、幻影にあった時に後悔の念に苛まれたことなど…その感情を正直に伝えた。
「知ってたよ。ひーくんも悩んでいたこと…辛かったよね」
「小春に何をすべきだったのかな…もっと優しくできたのかな…」
「…ひーくんは悪くない。あの高校が良くなかったんだよ」
「そうなの?」
「私としーちゃんは中学卒業したら専門学校行ったからわかんないんだけど…小春、すごく悲しんでたんだよ」
「そうなの?」
「亡くなった前日、私が話したのは…もう高校が嫌だってこと。偏差値も悪くない、平凡な高校だと思っていたのに…」
「あの高校は嫌だった。少しでも空気が読めないと陰口をたたかれ、少しでも目をつけられたら差別される。陰湿ないじめがずっと続く感じ。身体的な鋭い痛みじゃなくて、精神的に少しずつ蝕む鈍い痛みが毒薬のようにずっと続く」
「ひーくんの笑顔が消えたのも…この頃だっけ?」
「そしてそんな僕と仲良かった小春は…もっと凄惨だった」
飛翔は小春が受けてきたことを知っている限り話した。椎奈と宮子も知らなかったこと、同じ高校の雪でさえ知らなかったこと、先生にも伝えられなかった犯罪の数々…
「それ…知らなかったんだけど…」
「僕は止めようとしたけど…先生が呼び出したんだよ…何の用事もなかったのに」
「…これ以上は聞きたくない」
「まぁ…助けに行こうとしたら、もう遅かった。惨状はそこにあったんだ」
こうしているうちに、夕方になっていた。夕食は小春が好きだった、あの料理だった。
「飛翔、できたんだ」
「ちょっと口に合うかはわからないけど…」
「え?ひーくんって学食コンテスト初代MVPで…レビュアーで…料理上手じゃないの?」
「…ひーくんがそんなこと言うのって珍しいね…それを言うってことは…」
「…今日は煮込みハンバーグです!トマトソースの!」
「これって…小春の大好物!」
「味の完全再現に自信がなくて…」
「確かに。酸味が少し多いね…でも、ハンバーグは再現できてる…」
「いいんじゃないかな?」
「ありがとう」
8月30日の23時、外の星を見ながら4人は話していた。




