472話 静かな海
「今日は8月の13日か…お盆だね…でも、何もないね。お祭りも無ければお迎えすべきご先祖もいない…」
「そうだな…はぁ、久しいな」
栗本へ向かうバスの中、飛翔とクレアは談笑している。久しぶりにお墓に向かおうかと思ったが、クレアは止めた。飛翔の分の墓参りは結花と夜晴に任せたそうだ。そして、2人は定食屋に行った。
「今日は会って欲しい人がいるんだ…」
「しぐれさん?それとも撫子さん?」
「違う…今日は私の過去を知って欲しいわけじゃないんだ…」
クレアが席を立ち、誰かを呼ぶ。すると、あの時の少女に再会した。その少女の瞳は、変わらないぐらい澄んでいた。
「飛翔、この子に見覚えはあるだろうか?」
「…新保でお世話になったね。海荷ちゃん」
「よかったな、君が探していた人だ」
「そうだったの…どうして声が聞こえないんだ?」
「…今回はその件で呼んだんだ。私は定食屋を開く傍らで人探しを頼まれてね…警察からも声がかかるぐらいには信頼されているんだけどな…この子の声が聞こえないのはどうしてだろうか…」
「…新保に行った方がいいかも。ここからなら1時間あれば行けるよ」
こうして3人は新保という港町に行った。
「…ごめんね~」
「海荷ちゃん、やっぱり…」
「飛翔の思った通りだったか…」
「…あはは。私の事だよね…実は思ってる通りなんだ…」
「やっぱり…場面緘黙症?」
「…その病気はちょっとわからないんだけど…この町を離れちゃうと…声が出せなくなっちゃって…」
自覚はしていないが、クレアと飛翔は確信していた。海荷は病気だと。
「その理由を説明しましょうか。二人はこの町初めて?」
「いや、何回か来たことがある」
「なら構わない。先に言うと…海荷も私も、学校に通ってるの」
「え…!?」
「正式には…私たち二人、秋に転学するんだ…施設長…あ、学長に認められてね…」
「施設だよね?精神障害者を集めるところの…」
「まぁ、そうね。私は春風なる…そう、クレアならわかるよね?」
「…春風ってあの一家の!?」
「飛翔は知らないよね…私、目の前で殺されちゃったの。それで私も少し傷ついてね…本当は…今でも怖いの。犯人は捕まったのにね」
「PTSDか…でも…克服できて…」
「克服なんてできないよ。気にしないようにしなければいいって先生が教えてくれたの。だから、もう元に戻らない。海荷は場面緘黙症って言ったじゃない?実は違うんだよ。本当は…」
「私、対人恐怖症なの。人と接するの…本当に怖いんだ。今は克服できたんだけど、本当はみんな怖かったんだ…」
「まぁ、クレアは前科者だけど悪い人じゃないからね」
「そういう飛翔も怒らせない方がいいらしいけどな」
こうして仲良くなった4人は、時間が許す限り話していた。そして…
「今日、花火大会だったね」
「綺麗だな。帰りは神楽阪まで直行するよ!」




