466話 「存在」する理由
「会議の結果、処遇が決まった。次に大きな問題を起こしたら天使を解雇させよう」
6月30日、火曜日。悩んだ末に処遇を決めた初音。解雇と聞いて処遇は軽く思うかもしれないが、この世界における解雇というのは堕天使になったり逮捕されて刑務所に言ったりすることよりも重い。いったいなぜだろうか。
この世界で重要なのは名声でも権利でも地位でもない、存在するための価値というものだ。その価値を得るために仕事をしたり、勉強したりしている。しかし、中には引きこもってその価値を捨てようとする人もいる。価値がなくなるとこの世界から消されるとわかっていてもだ。この世界に住むものの多くはそれを理解し、精神的な不安やトラウマ、誰かへの恨みや偏った愛などと戦いながら生きている。戦いながら価値を得て、価値を分かり合う友達や仲間を増やし、その戦いの中で自分自身の能力を成長させる。
蛸島隆平…彼は少なくともこの天使会での価値が危ぶまれている状況であり、ここを解雇されると他の所が獲得する可能性は少ないと思う。初音は各方面にも話を通していた。
「急に呼び寄せて申し訳ないです。送った文章の通りのことが起きてしまいました」
「そうか。天使にしては珍しいな。しかし、悪魔がこれを獲るわけにはいかない」
「それはどうしてじゃ?」
「初音が解雇を悩んだということは相当の事情があるんだろう…魔王様がこういう人事に口出さなくなったから…」
「宏の言うとおりだ…というか、お前が来るとは思わなかったがな」
「妖怪の方も悪魔にとられたからな。神だけはこっちにしないといけないから」
「しかし、八百万の神々だけとはな…弱小だな」
「天王寺愛瑠…でも可哀想だよね」
「確かにな。俺らより後輩なのにこのような重圧を抱えさせられてな…」
「しかも能力者だけの協会も出てきたからのう…」
「…そうなの!?」
「知らなかった!」
「あれ?最近は結構増えているからいいと思ったんだけど…」
「会長は誰なんだ?」
「い、今呼び出すから~」
こうして愛瑠が呼び出したのは、能力者協会の会長だった。
「会長の桜木葉子です、隣は副会長の森山梨穂」
「よろしく。能力者協会というのは…」
能力者というのは種族は人間のままで特殊能力を持った者のことのようだ。しかし、狼男や半分人間半分怪物のようなものもいる。基本的にはすべて受け入れることができるとのこと。
「もし解雇されたら…と言いましても理由によりますけど…でも、受け入れようと思います」
「そうか、ありがとう」
こうしてこの一件は…静まったと思おう。
「解雇か…残念だけど受け入れるしかないよ」
「本当は心苦しいけどな」
「でも、仕方ないですわよね」
「まさか解雇されるなんて…」
この天使たちの会話を聞いた隆平は、内心安堵したうえでどうやらよからぬことを考えているようで?




