463話 何かたりない
「隆真さん、この新人たちにだしを作って欲しいんだ。具材はあるでしょ?」
「まぁ…あるが…」
「コンソメスープか味噌汁、だし巻き卵でもいい。だしを使った料理をお願い」
「飛翔、一体どういうこと?」
飛翔の考えはこうだ。今回のラーメンは全員が協力して作ったものだと考えた。しかし、協力したもの特有のハーモニーが感じられなかった。そのハーモニーが崩れた理由を知ろうと思い出しを使った料理を所望した。だしの作り方、使い方、どんな具材と合わせるかによってその人の料理の嗜好や想いなどが読めるのではないかと思ったそうだ。
「…いちおう全員のはできたが…どうだ?」
「うん、個別にフィードバックをするんだけど…ラーメンの感想は美味しかった。少なくとも悪くはなかった」
「それならどうして作らせたんだよ!」
「…麺は美味しかった。具材も美味しかった。スープが迷子だった。だから別の料理を作らせた」
「…麺も具材も、お店のものじゃない!じゃあ私たちの料理はまずいってこと!?」
「違う…ということはまずいって自覚しているのかい?朝陽さん、君は出汁料理で赤だしを作ったね?」
「そうだけど…」
「…味噌の香りと具材選びが完璧に良い。ラーメンのだしの基礎にいなかったのが残念なくらいだ。たぶんかえしを作ったかな?もったいない…才能はある。感情のコントロールさえ学べばよりよくなる」
「そう…ありがとう」
「…次はひまりさん。君は出汁料理にがめ煮を選んだね…ちょっと甘すぎるな」
「はい!?醤油と砂糖は分量通りに…」
「酒とみりんはどうなの?これみりんの甘味だよ?…調味料の知識を入れないと出汁もうまくいかせないよ?」
「そうですね…」
「花さんは炊き込みご飯を選んだんだね…味も香りも良かった」
「はい…お褒めに預かり光栄で…」
「うん、ただ1番出汁じゃなくて2番出汁でもよかったと思うんだ。細かいことを言うといい味なんだけど薄いんだ…もう少し芯があると良いと思ったよ」
「はい…」
「次に隆平君。君は出汁と聞いておでんを思いついたんだね…」
「…そうですが、何か文句あるんですか?」
「…具材も味付けもぐちゃぐちゃだよ。君の味がラーメンを崩している。もちろん君だけじゃないんだけど…」
「文句があるなら食べなくていいです…ってか、何様ですか?あなたそんな大したことないでしょ」
「…一口食べて捨てた。さっきからお前の態度が気に喰わないんだよ…何ふてぶてしい態度とってんだ。そんな人の料理は食べたくない」
「それは言い過ぎでは?」
「彩江さん、君の料理も同じだよ。まずだし巻き卵はセンスがいい。100点だ…でも砂糖や醤油が入ったらそれはもう玉子焼きなんだよ」
「それは人の勝手で…」
「料理が違うんだよ!口答えしない!それと…翡翠ちゃんは…山形のだしだね。美味しかったけどだし汁を作って欲しかったよ」
「あはは…」




