447話 腕が落ちてもAIは使ってないとだけ
「どうして正座させられてるの…」
時間は経って5月14日、結花が旅館に戻ってから1週間経った。その間絵梨はどこか行ってしまったため、飛翔は原状回復させていた。
「結花さん…ちょっと車ください…元に戻せなかった場所もあったので…」
「どこがダメだったのですか?」
「…洗濯機が動かない、冷蔵庫も問題はないけど調味料の減りがおかしい。あと、忘れ物も確認して欲しい。たぶん減ってる」
これは原状回復して3日目のやりとりだ。そして5日目、ぶっ通しで働いた飛翔の身体は悲鳴をあげた。突然気を失うと、14日の朝まで起きなかった。どうやら働きすぎらしい。
「…何勝手に解雇させたんですか?そもそもそんな権限与えた記憶もないんですけど?」
「すみませんでした…」
「謝ればいいって問題じゃないんです!あなたの独断によって旅館のシステムは崩れました。予約していた人も何人かキャンセルしましたよね?」
「それは1人だったから…」
「そもそも旅館都合での予約キャンセルはダメです…1人だったら泣きついてでも飛翔さんに頼めたでしょう?」
「頼めました…だけど!なんか生理的に無理…」
「はぁ?もう一度言ってください。」
「だから生理的に無理だって…」
その刹那、結花は絵梨の頬を叩いた。暴力を振るわない彼女にしては珍しかった。
「…痛いじゃない。何するの!」
「生意気な口を聞かないでください。そもそも貴方も、飛翔を殺すために来たのでしょう?」
「…そうよ。桜坂先輩を奪おうとしたのだから当然でしょ」
「…あの人飛翔さんの飲み友なだけですわよ?」
「そうだったの!?」
「そうだよ…」
「…じゃあまずいことしましたね…」
「どうせ怒られるとか思っているのでしょう…」
「先輩!?」
「ただの自己保身じゃない。それじゃあ何回やっても反省しないじゃない。というかそもそもあなたは学生でしょう?学生ならそんなことしてないで勉学に励まないといけないわ…」
「…ごもっともです」
「…このあとの説教は私でいいかしら。お礼とかいらないから」
「わ…わかりました…しかしいつからここに?」
「結花が頬を叩いた時から。珍しいじゃない、そんなことをするだなんて…まぁ、事情はなんとなく分かったけど」
「そうですね…というかゆりねさん!聞いてください!」
こうして彼女たちは家を出た。旅館の中には静かにたたずむ飛翔の姿のみ。
「静かだ…そうだ、久々に料理をしようかな」
飛翔は家に残っていた材料で調理をした。久々だったから腕は少し落ちていた様子。
「落ちたね…料理は美味しいんだけど…良くはないね…」
「そうですか?あまり変わらないように思いますけど…」
「…つむぎ!?どうしているんだよ!」
「なかなかトイレから出られなくて…そもそも飛翔さんが倒れたと聞いたから来たのですよ!」
「…すみませんでした」




