434話 世界一幸せな家なき子
「ちょっと!あんたがここの副支配人?」
新しい春が始まり、結花はジュネーブのシフトでしばらく社宅で過ごすことになった。しかし、開口一番に放たれたのは高圧的で鋭い一言だった。
「そうですけど…君が代わりの女将?」
「そうよ。私は銅銭絵梨。あんた、誰?」
「僕は飛翔。神崎飛翔だ。副支配人で、結花さんの嫁だ。」
「そう、私が来たからには…私のやり方に従ってもらうわ。」
「君も…結花さんと同い年だろ?」
「えぇ、だからどうしたの?私は私だから。で、早速だけど…飛翔、君はもういらないから。」
「え…」
「だから、ここには私だけでいい。すでに予約はとった。それ以上は言わせないで。」
「…そう。わかった。」
住み慣れたはずの家を追い出された飛翔。行く当ては…いくらでもあった。
「なに!?飛翔が追い出されたの!?」
「信じられません…私の部屋は…狭くてダメですね。」
「私も。雪はどう?」
「ダメだね。ひーくん、ごめん。」
「サーシャは?さくらは?」
「ちょっと狭いですね…綺麗にしてたつもりですけど…」
「わたくしもダメでした!」
「…まじで?…そしたら飛翔、空いている部屋を使って!」
「…それは元々の自分の部屋!そして今倉庫になっとるがね!」
「…掃除は手伝うわ。」
そして、久しぶりにアパートで住むことになった。大家は笑って許してくれたが、住民は怒り心頭だった。突然の引越しの件もそうだが、飛翔を独断かつ速攻で解雇したことが許せなかった。ただ、糾弾することはできなかった。元々の女将がしばらくいないからだ。
「どうすればいいんだよ…ジュネーブ行くか。」
ジュネーブは神楽阪からバスで5分、なかなか大きな建物が目印。しかし、今日は珍しく休業日。どうやら社宅で新歓のようなものをやるからだそう。
「それなら後日にしましょう。」
「それに、久しぶりで楽しそうだし。」
「じゃあ、今日はこれで決まりだね。春だから鍋パ!」
「雪…それを言うならたこ焼きじゃないの?」
「それが…たこ、買い忘れた…」
「…私が買ってきましょうか!?」
「さくら…ロピア、今日珍しく休業日…」
「…どうしてですか!?」
「改装工事だそうです。チラシに書いてありました。」
「だから闇鍋パーティーだよ!ちなみに、出汁の素は私が決めるからね。」
「それは構わないのだけど…ここらへんのスーパーってあとどこだっけ。」
「…大人しくコンビニですね…」
「確かに…神楽阪にスーパーを増やしてほしい…」
「それが叶うのなら…どれほどよかったでしょう…」
「まぁ、今日は不完全燃焼な1日と言うことで!4月14日!不完全燃焼記念日にしよう!」
「それでいいのか…真音…」
「飛翔は具材がないから買ってらっしゃい!」
こうして、夜の鍋パーティーは幕を開いた。




