426話 レッド・コック?!
4月4日、土曜日。
「桜を見に行ってくるね。」
「…くしゅん!」
「さくらちゃん…たぶん違うわよ。」
「だって、真音ちゃん…飛翔さんが…さくらを見に行くんですよ?」
「なるほど…確かにそれはそうなるわね…」
「2人とも違いますよ!植物の桜です!」
「京子の言う通りだよ。」
「…飛翔さん、どこに行くのでしょうか。」
「さぁね、私たちに言われてもわからないわ。でも言えることもあるわ。」
「それは何でしょうか?」
「雪はここを引っ越さなかったということ。」
「あ、そうね。だって中町に行ってもみんなに会える。だけど、やっぱりここを離れたくないなって。」
「本当に雪は…大好きだよ!」
「でも、ひーくんはどこの桜を見に行くんだろう。」
飛翔はバスに乗った。駅前のいつものロータリー、引っ越しのためのトラックが時々通り過ぎる。
「~♪」
鼻歌を歌いながらバスは栗本まで向かった。そしてバスを乗り継いで、向かった先は隠れた桜の名所だった。
「ここが隠れた名所。綺麗だって話を小耳にはさんだから来てみたけど、これは綺麗だ。」
「そうですね。綺麗です。」
「…あれ?何か用なの?」
「こちらこそ何か用ですか?ここら辺では見ない顔です。」
「僕は神崎飛翔。街を歩いて出会いを求める料理人だ。」
「そう、料理か…もしかして学食の第一人者?」
「…浜大の学食で少しだけね。あの黄金世代の右腕と言われたこともあったな。」
「…そっか。じゃあ、私の事は覚えてないかもね。有象無象の一人だから。」
「君は誰なんだ?」
「私は宋高大学の平安咲夜。聞いたことないでしょ。」
「聞いたことはある。赤色の料理人…でしょ?」
「…その呼び名を知ってるんだね。飛翔くんと言ったっけ。じゃあ、今私が考えていることもわかるかな?」
「それは…桜が綺麗だなって…それしかないでしょ…」
「半分正解ね。ここの桜は綺麗だけど、この綺麗な景色は私の料理にどう活かせるのかなって考えていた。それだけよ。」
「そうだったんだ…」
「でも、ここには何もないわね。私は家に帰るわ。」
「そっか、じゃあね。」
「またいつか会いましょう。」
彼女と別れた後の桜は、どこか悲しく見えた。
「さぁ、帰るか。」
バスを乗り継いで、家に戻る。その道中、不思議な看板が遠くに見えた。近くなるにつれて、興味が増えた。興味と理性の勝負は、興味がダブルスコアで勝ってしまったようで、途中のバス停で降りたようだ。
「日吉台…いつぶりだろうか。でも、もっと先だね。ちょっと向かおうかな。」
日吉台から神楽阪の方へ歩き出し、神楽阪の駅まであと少しというところで怪しく光る場所が見えた。春というのは色々な欲が渦巻く場所だ。しかし、急にこういう場所があっても困るだけだ。
「まぁ、入るしかないな。」




