416話 密告者:X
「3月16日月曜日の朝です。連日お伝えしてます通り、○○町の誘拐立てこもり事件は…」
ニュースでは飛翔たちがいた誘拐現場が映っていた。とうとう警察も動き出して犯人を捕らえようとする。しかし、48時間経った今でも人質をとったまま動こうとしない。もう逃げられないと言うのにだ。
「こんな大事になっていたなんて…伝えたいよね、警備が弱いって。」
「それが…ニュースによると逃げ出した人がいるので警備を強くしたそうですよ。どうして人質は逃げたのでしょうか…」
「…それを逃げた人の前で言うか?」
「それもそうでしたわね!」
「しかし…あの子もかわいそうだよね。みんなに忘れられちゃって…」
「あれ演技だよ。」
「波音ちゃん!?やっぱりそうだったの!?」
「…飛翔と私はうっすら聞こえちゃったの。」
一方テレビでは、現場の中継がまだ映っていた。ここには恐怖心というより、ただ関心を持たせたいだけのように思える。まるで彼女の演技に導かれるかのように。
「しかし暇だね…暇だから何か進展ないのかしら…」
「…それでしたらここでバトルでもしましょうよ。」
「バトルって?相撲も柔道も嫌よ?」
「全部身体使うじゃないですか!もっと有意義なもので勝負しましょうよ。例えば…」
「…どっちの料理の方が食べたいのかを決めてもらうとかってどう?」
「それいいですわね!でしたら料理人と審査員をじゃんけんで決めましょう!」
公正なじゃんけんの結果、真音と波音の2人が戦うことになった。そして、審査員は…ニュースの映像を見て衝撃を受けていた。
「彼女の要求…逃げた人たちを取り戻すこと?」
「そうですわ…ありえないです。ひどいです。」
「羽ばたいたら戻らないことを知ってるのだろうか…」
「飛翔さん…私たちだけでも戻ろう?」
「それは嫌だな。」
「…どんな条件を出されても?」
「嫌だね。あの子の本性を知ってしまった以上、どうすることもできないよ。僕たちが同情すれば同情するだけ調子に乗る。ああいう相手には無視が1番効くんだよ。」
「そうですけど…」
「明日海さん、飛翔さんはどういわれても戻りませんよ。それに、きっと戻ったとしても待っているのは痛くてつらいことだけですよ。」
「…本当に戻りたいのなら…これを見てから考えて。」
彼女に見せた映像は野次馬が撮った誘拐現場の動画だ。画面中央には梨穂と吉乃が傷だらけになりながらもは向かっている様子だ。
「…私に…私に止められるのでしょうか?」
「自分の能力を信じればきっと止められる。でも…明日海ちゃんは一瞬躊躇したよね?」
「はい…」
「それなら戻らない方がいいよ。それに…この野次馬の正体は…」
「…波音ならきっと呼んでますね。」
「…飛翔、明日海、料理できたから一緒に食べようよ。」




