410話 涙のリクエスト、食べれなかった3月某日
「なんだか調理実習みたいだね。」
「なるほど…給食を作るんだね。」
「そう。今日はキムチチャーハン、わかめスープ、もやしナムル…でいいかな?」
「お昼にぴったりだね。」
給食のようなお昼ごはんはみんなで力を合わせて作り始めた。次第と形になっていき、完成した時はみんなが涙を流した。
「…美味しい。辛すぎず酸味も収まってて…バランスがいいね。」
「わかめスープもあったかくて…心が温まる味だね。」
「もやしも給食らしくて…涙が出ちゃいました。」
「…ひーくん、どうして作ったの?」
「これが食べたかったんです…」
「どうして…」
「ひーくん…もしかしてあの日の給食の再現をしたでしょ。」
「…雪の言うとおりだね。あの日もこんな暖かい春風の吹く日だった。」
中学時代の3月某日、飛翔はトイレに閉じ込められた。給食の時間ずっと閉じ込められた。先生も気づかなかったらしく、飛翔は給食を食べられなかった。
「給食だけが楽しみだったんだよ。中学時代の中のオアシスだった。僕がこんな目にあう理由も、その日にわかったんだ。僕みたいに夢がある人の夢を壊したかったんだって。先生もむしろ笑ってた方だったよ…馬鹿がよ!ふざけんな!どうして夢を笑われなきゃいけないんだよ!」
「飛翔…いいよ、止めないで。すべて吐き出してね。」
「…夢は諦めなかった。雪たちが結局認めてくれて…どこかの噂で聞いたオタクに優しいギャル…じゃないけど僕にはそれが見えたんだ。」
「まぁ、そう見えるよね。私含めて外じゃ結構おしゃれだったもの。」
「…飛翔、もう夢はかなったんだよ。」
「そうだね。ごめんね、取り乱しちゃって…」
「私ね、飛翔さんの思ってること…とってもわかります。」
「夢は守るべきですよね。」
こうして学校時代とは違う急かされないゆったりした…給食のような食事を楽しんだ。
「夢を笑うのって最低だよ。本当…はぁ。みーちゃんとしーちゃん…ここにこないかな。」
「来たとしても後輩になっちゃいますしね。」
「会えるだけでもいいんだよ。でも、エゴで転生させちゃったらまずいんだよね…」
「感情任せの転生って…させられた本人には迷惑ですもの。」
「そうだね…でも、今の飛翔の姿を見せてあげたい。」
「…いつか来ると良いですね。」
雪と京子はアパートの外通路で黄昏ながら会話をしていた。一方真音とさくらは晩御飯の支度をしていた。飛翔も後片付けを終えて、晩御飯の準備をした。
「今日はロールキャベツ。意外と美味しいんだよね…そういえば、母親の手伝いで材料から作ったこともあったなぁ。手伝ってないと機嫌を損ねちゃうからって思って手伝ってたけど、結局今になってこれでよかったなぁ。」
飛翔の食卓は一人だったが、空気はどこか暖かかった。きっとそこには思い出があったのだろう。




