409話 遠い過去、悲しい記憶たち
「仰げば尊し、とはよく言ったものだが…卒業ソングと聞いて僕が思い出すのは、旅立ちの日に、だろうな。」
「確かに、あの曲ってなぜかよく歌われているよね。ところで、今日はどうしてこの話をしたの?」
「だって…3月9日だもん。どこか卒業式の場所とかあるでしょ。」
実際、ほとんどの学園では今日が卒業式だ。卒業式が終わると様々な催しがあるのが特徴だ。浜中大学の第2部、宋高大学の二次会あたりが有名だろう。
「流れる季節の真ん中で、ふと日の長さを感じます。」
「京子、セリフみたいに言ってるけど…歌詞だよね?」
「瞳を閉じればあなたが瞼の裏にいることで…」
「どれほど強くなれたでしょう…あなたにとって私がそうでありたいです。」
「雪もさくらも…各方面に謝らなきゃダメよ…あと卒業式に歌ったの羨ましいなぁ、おい。」
「真音は歌わなかったの?」
「その曲は歌わなかったわ…飛翔も歌ってないでしょ?」
「歌ってるよ…というか中学も雪と同じだし…」
「あの時の飛翔はひどかったよ?みんなからの扱いがひどかったんだから。」
「あ、人格の話じゃないのね。」
「ひーくんだって辛かったし、悲しかったでしょ。そうだ、ひーくんの卒アル…中学の卒アル…あった!」
「いやどこにあるんですか!」
「そういえば卒業式のあとに、ギャル集団にとられたの思い出したわ。」
「ギャル集団って…確かに陽キャのおしゃれでうるさい集団の一員だったけど…」
「まぁ、寄せ書き見てみなって。」
飛翔の卒業アルバムの寄せ書きは、女子の可愛らしい筆跡ばっかりだった。
「いやおかしいでしょ。」
「どうして飛翔さん…モテてるじゃないですか。」
「何が彼女できないだよ!もう、心配してあげないんだからね!」
「おいおい、よく見てみてよ。」
よく見ると、可愛らしい筆跡はあったが、男の筆跡は一つもなかった。それどころか、雪の卒アルもあり、その時のクラスの現状が書いてあるだろうページが開いていた。
「これ…モテてたから嫉妬されたんでしょ。」
「…真音さん、これ違いますよ。飛翔さん、男子にされたことって言えますか?」
「されたことって…的にされたり無視されたり…あ、でも夢については笑ってくれたね。」
「さくらは…今のひーくんの発言についてどう思う?」
「いじめじゃないですか!」
「正解。ひーくんはいじめられてました。クラスの大部分は無視して、男子たちには…だから制服、よく見ると破れてるよね…私たちは表ではいろいろ言ってたけど…裏では謝ってた。私の仲間、みんな来たらよかったのに。」
「転生前はどんな町に住んでいたの?」
「少なくともこんな明るくて優しい街ではなかったね。うん、全然明るくなかった。」
「…そうだ、ちょっとだけ料理に付き合ってくれないかな?」
「飛翔…分かった。みんな、行こうか。」




