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偏食家  作者: 池田圭


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チーズバーガー

 皆さんは、ハンバーガーの定義を知っているだろうか?

 俺の知る限りでは、バンズと呼ばれるパン部分に、牛肉を挟んだものがハンバーガーと言われる料理である。

 その為、パン部分に牛肉が入っていない時点で、それはハンバーガーでは無いのである。

 にも関わらず、日本人は皆、牛肉が入っていないパンで挟んだ料理をバーガーと言って食べている。

 ハンバーガー発祥の地で生まれたアメリカ人は、日本で旅行等で訪れた時にその事実に驚愕することは間違いないだろう。

 そんな事を考えていた仕事帰りの俺は、あるハンバーガー屋の中にいた。

 席に座っていた俺は、注文したハンバーガーが来るのをまだか、まだかと待っていた。

 ここのハンバーガー屋は、美味しさと安心を売りにしたチェーン店である。俺はその店のハンバーガーが好きである為、何度かここの店を訪れていた。

 正直、ここのハンバーガー以上に美味しいチェーン店のハンバーガーはここ以外無いと俺は思っている。

「お待たせ致しました。」

 そう店員さんが俺に声をかけると、私の座っている席のテーブルに、注文したハンバーガーとレシートを置いた。

 俺はハンバーガーを持ってきてくれた店員さんに会釈をした。そうすると、店員さんはニコッと笑い、それらの物を置き、カウンターの方へ戻って行った。

 俺は店員さんが戻ったタイミングで、ハンバーガーが入った包みを開け、ハンバーガーの匂いを嗅んだ。

 やはり、良い香りだ。

 包みに入っていたのは、チーズの入ったハンバーガー、チーズバーガーである。

 しかし、このチーズバーガーはただのチーズバーガーでは無い。とびきり美味いチーズバーガーなのである。

 ここの店舗にあるチーズバーガーは俺が確認した限り、4、5種類ある。その中でもこのチーズバーガーは、1番値段の高いチーズバーガーで他のチーズバーガーに比べ、味が格別に美味しいものとなっている。

 このチーズバーガーの美味しさの秘密は、100%国産牛使用のパティ、北海道産のゴーダやチェダー等をブレンドしたチーズ、グリーンリーフとトマト等の野菜といった、こだわりぬいた食材を、一度に惜しみ無く使っている点である。

 これらの良い具材を使ったハンバーガーが不味いはずがない。

 俺はそう思いながら、チーズバーガーをひとくち喰った。

 その瞬間、口の中では肉とチーズの濃厚な味が広がり、それと共にグリーンリーフやトマトのフレッシュな感じが、口の中で混じりあい、何とも言えないハーモニーを醸し出していた。

 その美味しさにやられた俺は、口を休むこと無く、バーガーを食べ続けた。

 そんな感じで喰っていた俺は気がつくと、チーズバーガーを完食していた。

 俺の楽しいひとときは、あっという間に過ぎてしまった。

 俺は、ナプキンで口をふき、チーズバーガーの美味しさの余韻を堪能した。

 しかし、このチーズバーガーをこんなに絶賛してなんだが、俺はこのチーズバーガーに少し物足りなさを感じていた。

 今回、俺が喰ったチーズバーガーは、俺が幼少の時からある懐かしのメニューで、ここのハンバーガー屋に来る時はいつも頼むメニューであった。

 その時のチーズバーガーは、今回俺が喰った物と少し異なり、グリーンリーフやトマトは入っていなかった。

 しかし、グリーンリーフやトマトといったものが入っていないことにより、このチーズバーガーは、チーズの濃厚さと肉の旨みを引き立たせていた。まさに、ジャンキーな味わいのハンバーガーといった感じである。

 そもそも、ハンバーガーという喰い物は、ジャンクフードだ。体に悪いが、美味しいものを喰いたいと考える人が、背徳感を感じながら喰うものだ。

 それがジャンクフードの醍醐味な筈だ。

 それを考えると、あの頃のチーズバーガーは、確かにジャンクフードらしい美味しさがあった。無駄にフレッシュな野菜を入れず、ただ単に背徳感を感じさせる美味さがそこにはあったのだ。

 しかしながら、近年の物価高により、チーズの値段は高騰した。

 その結果、このチーズバーガーは、チーズの量を減らす代わりに、フレッシュな野菜を入れられた新しいバーガーとなったのである。

 店を出た俺は、そんな事を考えながらあのハンバーガー屋を少し眺めた。

 時代の流れというものは日々動き、変わらないものはない。

 そういった変わりゆく景色を見るのも、趣があると思うが、人には変わって欲しくないものもあるものだ。

 今回の俺の場合、それはあのチーズバーガーである。

 しかし、俺にその変わりゆく日々に抗う術はない。俺はただ、この変わりゆく景色を受け入れなければいけない。

 それは俺以外の人間もそうなのだろう。そんな事を受け入れることにより、人は大人になっていくのだろう。

 そんな事を考えながら俺は、いつも通り、歩いて家に帰るのだった。

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