23話
Side――????
ベイスが死んだか……【想定眼】は記憶の逆流が起きやすい。歴代の想定眼の保有者は最後、全員狂い死んだ。
死因を知りたいところだが、まだ低位の複製体では記憶を引き継げないのが残念だ。
「マジコミでの仕込みは失敗だ。」
『残念、狂って暴走しちゃったか。また誰かに【想定眼】を植え付けないとね。』
『想定眼から未来視の神眼に至る者を得るのは中々に難しい。』
『自然発現者は我々の存在を察知している。』
「未来が視えるなら、我々に認知されないよう動く。」
『未来視を消さなければいくら準備が終わろうと、大きく事を起こそうとした瞬間、未来視に視られて"王共“に袋叩きにあう。』
『ベイスが執着した戸渡清仁はどうする。』
「様子見だ、あれは使える可能性がある。それに手を出し見つかれば此方が滅ばされかねない相手と縁がある。」
『我々の力は日々回復へと向かっている。』
『想定眼を複数作成できるようにも成るだろう。』
「私は表で"覚醒者“を増えるよう無能力者の人間に刺激をあたえ続ける。人間の身体にも馴染んで□□□因子を散布しやすくなったからな。」
『我々は今だ馴染まないがコツはあるのか?』
私はテレビをチラリと観る。
『続いてのニュースです、会社員□□□さんが焼死体となって発見されました。情報によりますとネットに動画がアップされ学生時代から行なった犯罪を告白し、謝罪すると共に自らに火を――――』
人間の魂がまた私に馴染むのを感じる。
「身体の持主の恨みを晴らせば馴染んでいくぞ。記憶からそれらしき人間を殺せば良い。」
『成る程理解した、試してみよう。』
『目立たない様に試してみるよ、良い情報だった。』
「人間らしく言うならそこは“ありがとう"だ。感謝を伝えると怪しまれる頻度が落ちるぞ。」
『『ありがとう』』
コンコン
繋がりが閉じるとタイミングよくノックされたのでドアのロックを解錠する。
「先生、次の診察の時間です。」
「もうこんな時間か、教えてくれてありがとう。では行こうか。」
頬を染める女に微笑み診察室へ向かう。
そろそろ新たな私がコチラに来れる頃だ、新たな自殺する人間を見繕うわなけばならない。
誰が良いだろうな。
Side―――狐坂凛音
もう駄目だわ………お終いよぉ。
当主補佐候補から外されてしまう、マジコミに向けて沢山、訓練や勉強を頑張って来たというのに………。
「ほらほら凛音ちゃん落ち込まないの、今回は相手が悪すぎたわ。私から凛音ちゃんが、ちゃーんとしてた事は幸一郎に話しておきますよ。」
「ですが雪子様私は――。」
雪のように白い肌、歳は二十代に見える雪子様は私の頭を撫でて微笑だ。
「もう、私の事は雪子おばあちゃんって呼んで良いの、ほら呼んで。」
「……雪子おばあちゃん励ましてくれてありがとう。」
此処までしてくれたんだから恥ずかしいけど御礼は言わないと。
「んーーもう、可愛いぃ!私の玄孫凄く可愛いわ!」
「むぐっ?!ゆ、雪子様く、苦しい……。」
羨ましい程の豊満な胸で抑え込まれ、……い、息が出来ない――
「雪子様、凛音様が苦しがっております!」
「あら?ごめんなさいね。凛音ちゃんが凄く可愛いものだがらついねぇ〜」
コノハルが慌てて止めてくれてた。
はぁ死ぬかと思った雪子様は私の何が良いのか凄く可愛がって来る。嬉しいのだけどあの抱擁だけは止めて欲しいわ。
背後から冷たい風が頬を撫で、呼ばれた気がして振り返ってしまった。
背後にそびえる氷山、中にはジブィスと死んでしまった父より預かった部下達がいる……。
「凛音ちゃん……後から知るのも酷だから教えておくわ。血操術で生み出されたあれの内部に取り込まれた子達は私の魔術で仮死状態に保ってるわ。その他の子は死んでしまったけど、それは徒党を組んだ魔術師同士戦いでは起き得る事……。」
「分かってます!……分かってる…つもりでした……。」
私が命令して動いてくれた部下達。一緒に訓練もした、同い年の娘とはお喋りして買い物にも一緒行って………笑ってて。
私は本家で固有魔術に覚醒し、みんなに命令する立場
冷徹に冷静に判断してみんなの命を預かる大事な立場。
“当主補佐候補になれないどうしよう"なんて思いは現実からそらしたかったから……最低ね、私は……。
でもやっぱり反らせない向き合ってしまう。
「私は人の上にたって良いような人間ではないです………。だから――」
バシ
俯いていた私のおでこが痛み、顔を上げると雪子お婆様がちょっと怒った顔をされていた。
「"うだうだ考え過ぎだ馬鹿!
死んだ仲間ばかり見るな。
今生きている俺や部下達を見ろ。
そして部下達に聞け。
死んだ共達はお前を怒っていると思うかをな。
怒っているなら一緒に償ってやる。お前が落ち込んでると俺が別の意味で死んだ彼奴等に怒られるだ、姫を泣かすな!ってな"
――というのが凛音ちゃんより若く一族を率いて戦って落ち込んだ私に夫が言った言葉よ。
酷い良い方よね、もっとマシな良い方して欲しかったわ。」
「ですが言いたい事は分かります、厳しいですけど、とても心配してくれてると。」
あぁそうか……私は慰めて貰うじゃなくて叱って欲しかったんだ……私はまだまだ子供だなぁ。
心配して叱って手を取って受け入れて前に一緒に進もうと十二代目当主、狐坂誠一郎様はしてくれたのだろう。
それは雪子様も惚れるわけだ。
「雪子様、間もなく現場処理が終わります。」
「ご苦労様です。地下の調査はリ家の管轄。私達狐坂家はマジコミ内人々の動きに注視します。
動揺が大きい者、持ち場を離れる職員には特に注意をはらいなさい。」
私は雪子お婆様と飛竜でマジコミ運営本部に戻り待機する事になた。飛翔し始めて遠のく、あの場所で死んでしまった彼、彼女等に目を瞑り黙祷を捧げ誓う。
「貴方達の事は忘れない……貴方が誇れる魔術師……いえ魔法使いまで登りつめます。」
「……今は休みなさい。貴方は頑張りました、その心構えは当主補佐として認める事の出来るものですよ。」
スゥと視界を雪子お婆様に覆われると急な睡魔に襲われ、私は瞼を閉じた。
「ほんと、若い頃の私にそっくり……だからこそ心配になるんだけど、ね。」
悲しげな声を最後に聞き私は眠りに就いていた。




