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イカレた学者令嬢は最強スナイパー〜騎士様に逃げられたので毒舌奴隷を買いました〜  作者: 殿水結子@「娼館の乙女」好評発売中!
第1章.火山島のイカレた女

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2.男奴隷は火口に吊るされて死にたくない

 この火山地域特有の貫頭衣を着、サンダルを履いてウエストに腰紐を結ぶと、レッドはようやく奴隷から旅行者風になる。


 土産物屋で服を着せられ、そのまま食堂に連れて行かれる。メルが予約した席は個室で、卓上には既に温められた食器類が並んでいた。レッドは腹が減っていたのでさっさと席に着くが、メルは突っ立っている。


「どうしたんだ?」


とレッドが問うと、


「男性がお席を引いてくれませんと、座れないのです」


とメルが言ったので、彼は足で彼女の席を蹴った。


「あら、どうも」


 嫌な顔ひとつせずメルが座ってしまったので、レッドは舌打ちをした。


(火口に入る前にこいつから逃げなければならない。またはお役放免願いたいが……)


 何せ彼女には銃がある。買った奴隷を生かすも殺すも自由だ。また、彼女の頭のネジの吹き飛び具合から、何が引き金になって物事がどのように転ぶか予測が立たない。レッドが安全に逃走する方法を模索している内に、料理が運ばれて来る。彼は空腹には勝てず、ナイフとフォークですぐさま食事を始めた。


「まぁ!」


 メルが感嘆の声を上げる。


「奴隷なのに、ナイフとフォークの使い方をご存知ですのね」


 レッドはしまったと思いつつ、


「前に屋敷の使用人の小間使いやってた時、躾けられたんだ」


と言う。メルはキラキラした視線を送る。


「色々なお仕事をされたのですね?」

「まぁ仕事というか、強制労働というか……あんたが考えてるような生温い労働じゃないよ」


 様々な思い出が蘇り、レッドは吐き気を食事と共に飲み込んだ。


「そんで?あんたが俺を買った理由を教えてくれよ。俺はあんたに何をすればいいんだ?」


 メルはうーん、と虚空を見上げてからレッドに視線を戻した。


「簡単に言うと、護衛と採集です」

「護衛……採集……」

「はい。と、その前に、私の仕事のお話をさせていただいてよろしいかしら?」

「いいけど」


 メルは今までにない真剣な眼差しを向けて来る。


「ありがとう。私は植物学者でして、世界を旅しています。旅の目的は、薬に使える草花や鉱石を採取してウォーリス王国に安全に持ち帰ること。そのためのお手伝いを、あなたにしていただきたいのです」


 身を乗り出して熱弁するメルに、レッドはばっさりと言った。


「例えば、どんな?火口に立ち入ったりすることか?」


 メルはそれを聞きぽかんと口を開けている。


「知ってるぜ、さっき……」

「レッドは勘が良いのですね!そうです、火山帯にはまだ未知の鉱石が沢山あります!良く知っていますね、レッド。デザートも注文しましょうか?」

「今の内に言っておく。俺、火口には絶対行かないからな!」


 話を遮るのも一苦労だ。頭のおかしい女に捕まってしまった。


「そうですか?火口に何か嫌な思い出でも?」


 らちがあかないので、レッドは話題を変える。


「俺、もう疲れたから食べたら早く休みたいんだけど」


 するとメルは頷いて、


「そうでしたね!長旅でお疲れでしょう。私はもう少しお部屋でお仕事してますから、レッドは先に寝ていてくれて結構ですよ」


とにっこり笑った。ふとレッドの頭に疑問が湧いた。


「まさか、部屋一緒か?」

「そうですね、カーテンの間仕切りがありますが同部屋です」


 こともなげにメルが言い、レッドは少し震えながら呟いた。


「嫌われれば、あるいは……」

「何か言いましたか、レッド」

「いや……こっちの話」


 レッドは苦し紛れに笑ってみせた。メルも応えるようにニッコリと笑った。

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