第十四章・第十一話「病院にて」
病院に駆けつけると、待合室の椅子に、俯いた悠斗の姿があった。
「悠斗!」
「蒼……」
顔を上げた悠斗の表情は、憔悴しきっていた。
「亜衣は?」
「処置中だ。両親が、今中に入ってる」
悠斗はそう言うと、両手で顔を覆った。
「俺が、もっと早く迎えに行ってれば……」
「悠斗のせいじゃない」
俺は、悠斗の肩に手を置いた。だが、自分でも、その言葉がどれほどの慰めになるのか、自信が持てなかった。
しばらくして、クロウと本条も病院に到着した。
「状況は?」
「処置中らしい。命に別状はないそうです」
俺がそう報告すると、クロウは小さく頷いた後、周囲を警戒するように視線を巡らせた。
「犯人の特徴は、分かってるのか」
「亜衣から直接聞けてないので、まだ詳しいことは」
「病院を出る時は、必ず複数人で動け。今は、何が起きてもおかしくない」
クロウの指示に、俺たちは静かに頷いた。
しばらくして、処置を終えた医師が姿を見せた。
「意識ははっきりしています。腕の怪我も、幸い深くはありませんでした」
その言葉に、待合室全体が、安堵の空気に包まれた。
「会えますか」
「少しだけなら」
病室に入ると、腕に包帯を巻いた亜衣が、ベッドに横たわっていた。悠斗が、すぐに駆け寄る。
「亜衣、大丈夫か」
「うん……ごめんね、心配かけて」
亜衣は弱々しく微笑んだ。その顔には、恐怖の名残が、まだ色濃く残っていた。
「犯人の顔、見た?」
俺が静かに尋ねると、亜衣は小さく頷いた。
「覆面してたから、はっきりとは……でも、黒いマントみたいなのを着てて、腕に紋様があった」
その特徴に、俺たちは顔を見合わせた。黒鴉の構成員で、間違いなかった。
「――本当に、やりやがったのか」
クロウが、低く呻くように呟いた。羽鳥の宣言が、もはや単なる脅し文句ではなかったことが、これではっきりと証明されてしまった。
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