第十四章・第十話「応答なき呼び出し」
長いコール音の末、ようやく電話が繋がった。
「――蒼くん?」
「莉世!無事か!」
「え、うん。大丈夫だけど……どうしたの、急に」
電話越しに聞こえた、いつも通りの莉世の声に、俺はその場に崩れ落ちそうになるほどの安堵を覚えた。
「亜衣が、黒鴉に襲われたらしい」
「――え」
莉世の声のトーンが、一瞬で変わった。
「怪我は?無事なの?」
「命に別状はないって聞いてる。ただ、腕を怪我してるらしい」
「そんな……」
莉世の声が、不安に震えていた。
「莉世、今どこにいる?一人か?」
「家にいるよ。一人だけど」
「分かった。今すぐ、家の戸締りを確認してくれ。できれば、ご両親にも事情を話して、誰かに傍にいてもらった方がいい」
「う、うん。分かった」
莉世が、緊張した様子で答える。
「俺はこれから、悠斗たちのいる病院に向かう。何かあったら、すぐに連絡してくれ」
「気をつけてね。蒼くんも、無茶しないで」
莉世のその言葉に、俺は短く「ああ」とだけ答え、通話を切った。すぐに澪にも再度連絡を入れ、家で待機するよう伝える。
玄関を飛び出す直前、俺はもう一度、クロウにメッセージを送った。
『莉世は無事確認できました。今から病院に向かいます』
『分かった。俺たちも合流する。気をつけろ』
夜の街を駆け抜けながら、俺は改めて、羽鳥の宣言の重みを噛みしめていた。周りの人間に容赦なく手を出す――その言葉は、決して脅しだけではなかった。
(これ以上、誰も傷つけさせない)
強い決意を胸に抱きながら、俺は病院へと急いだ。夜の冷たい空気が、焦る心とは裏腹に、やけに鮮明に肌を刺していた。
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